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Live Shot

Hip-Hop Magazine Review

planet.KY home





 
Moor Mother / Black Encyclopedia of The Air
[Moor Mother / Black Encyclopedia of The Air] Philadelphiaを拠点とし、詩人やアクティビストとしても知られるMoor Motherの2021年秋リリースのアルバム。Rapというより、Spoken Wordといったほうが良さそうな作品で、様々な暴力についてのメッセージを、声を荒げずに、抑えた調子で伝えている。Guestも知ったところではArmand HammerのELUCIDやPink Siifuなど、多数参加しているが、みな、同じトーンで統一している。Trackは、Free Jazz, Electronicaなどをベースにしており、上物と合わせて、ExperimentalでAbstractな印象を感じる。30分強と短めであるが、しっかりと主張が込められた作品に仕上がっている。
Joy Crookes / Skin
[Joy Crookes / Skin] South London出身の23歳、Joy Crookesのデビューアルバム。10代から創作活動を初めて、SNSで見つかり、数枚のEPリリース後、アルバムデビューに至っている。BangladeshiとIrelandのハーフとのことで、CDのアートワークでも、UK Asianな雰囲気を出していて、音楽面でも、少なからず、その影響が見られる。ただ基調は、UKらしいVintage soulで、Amy Winehouseから痛々しさを弱めたような印象である。アコースティック中心のTrackは、手作り感は残しつつ、BalladからUpなものと様で、Joy Crookesの落ち着いたVocalを際立たせるものとなっている。また、Lyricでは恋愛や自身の考え方などを唄っている。
Sleaford Mods / Spare Ribs
[Sleaford Mods / Spare Ribs] UKはNottinghamで活動するSleaford Modsの2021年初頭リリースの6作目。2000年代中盤からの経歴を持つ2人組バンドであるが、今作ではUKチャートで4位と過去最高位を得ている。ベースは音数少なめのElectro Punkということになるが、Hip-Hop, Technoなどの要素も混ざって、曲調はあくまでも軽快でノリが良い。Lyricは、労働者階級からの体制批判みたいなものが多く、Rapや唄で、鋭く主張している。
Kanye West / Donda
[Kanye West / Donda] 2年ぶりとなるKanye Westの10作目。2021年秋のリリースであり、その後、Grammyも獲得している。レビューしたのは、Deluxe版のほうだが、CDには黒い紙が一枚挟まってるだけでCredit一切無しの不親切さ。。2007年に亡くなった母親の名前をタイトルにしているが、直接なテーマとなっているのは2曲のみで、恐れていたマザコンぶりはそこまで感じられない。そのかわりに、近作のように神や宗教を唄っている曲が多い。Choir, Organ, Stringsを多用したサウンドにもその傾向は顕れており、曲によっては荘厳さも感じられる。全体的には音数は少なめながら、音の圧は強めになっている。ただ、メロウな曲や、耳にやさしい曲もあるので、長尺なことを覗けば、聴き易いかと思う。なお、続作のDonda2はStem playerのみの提供でコア・ファン向けとなっている。
Mustafa / When Smoke Rises
[Mustafa / When Smoke Rises] Tronto出身のSinger, Mustafaのデビューアルバム(といっても8曲23分半と短め)。Weeknd, Camila Cabelo, Jonas Brothersなどへの楽曲提供で頭角を表し、デビューに至っている。また、Sudan系のブラック・モスリムということで、CDジャケットには一部、アラビア語でのメッセージも載っていて、サウンドにも、ほんのり、それっぽい風味も混ざっている。Joni Mitchell, Richie Havensあたりに影響を受けているとのことで、アコギやピアノ中心のAccousticなサウンドは、ほぼフォークといって良く、浮遊感のあるところが現代的。ただ、Lyricは友人の死や、都会人の孤独感などシリアスなものを扱っており、そう相当重たく、内省的で、Mustafaが掠れた声で切々と唄っている。
Yola / Stand For Myself
[Yola / Stand For Myself] UKはBristol出身のSinger, Yolaの3年ぶりの2作目。俳優としても活躍しているとのこと。出身地とアルバムジャケットから、アバンギャルドな感じなのかと思ってたら、まったくの真逆で、Vintage Soulな逸品となっている。一聴して、女性版CeeLo Greenと言えそうとも思ったが、CeeLoとはLabel Mateであり、彼の最新作と同じDan Auerbach(Label OwnerかつBlack Keysのメンバー)による全面Produceということで納得がいくこととなった。既にNashvilleに移っており、カントリーっぽい③がBest GrammyのBest American Roots Songにもノミネートされていて、UK色は0%のカントリー、ファンクが混ざったサザンソウル作品となっている。曲調はUp〰Medium〰Slowがバランス良く配されていて、Yolaも既に38歳ということで、少々かすれ気味の声で、曲調に合わせた、成熟したVocalを聴かせている。
Sault / Nine
[Sault / Nine] UKのユニット、Saultの5作目。2021年夏のリリースとなる。InfroとCleo Solに加えて、Kid Sisterもメンバーの一員であることが判明している。過去2作のようなBLMに呼応したコンシャスさは少し弱めで、地元Londonや生活に根ざしたLyricが多めになっている。サウンドは、Soul, Hip-HopをベースにUKらしいBreak Beatsを主体としている。冒頭、Tribalな曲から入るが、後半になるにつれて女性Vocalをフィーチャーしたクールで都会的なSoulに軸足が移っていく。静謐なスローもPopな曲も、良く作りこまれていて、心地よい。なお、リリース後99日で予告通り配信は停止となっており、現在はPhysicalを探すくらいしか、入手方法が無さそうだ。
Leela James / See Me
[Leela James / See Me] 2021年夏にリリースされたLeela Jamesの4年ぶりの7作目。デビュー以来、年齢のわりには渋い印象をもたれていたが、アラフォーを迎え、ついに年齢が曲調に追いついたという感じで、ミディアム~スロー中心の安定した上質のR&B作に仕上がっている。ProduceはLedisiとのコラボで知られるRex Rideoutが中心に担当しており、全体のレベルを押し上げている。既に成熟度の高かったLeelaのVocalは、温かみも加味されてきている気がする。全曲、落ち着いた曲で構成されるが、ラスト⑪のPopさも良いと思う。
Cloe Sol / Mother
[Cleo Sol / Mother] Jamaica, Spain, Serbiaの血を引く、西ロンドン出身のSinger, Cleo Solの2作目。2000年代後半から活動を開始し、数年は目立ったところは無かったのだが、最近ではSaultのVocalとして脚光を浴びるようになっており、そのSaultのInfloが全曲Produceを担当している。ただし、SaultのFunkでAfro CentricでConsciousな作風とは大分違って、こちらはAcousticで穏やかな印象の静謐でゆったりとした曲ばかりである。それもそのはず、アルバムジャケットに写っているお子さんを2021年6月に出産した直後の作品であり、母性と子供への愛に満ちている。Cleo Solの抑えのきいた、子供に語りかけるようなVocalと相俟って、聴くほうにも究極の癒しを与えてくれる。美メロが曲も多く、一方、最終曲⑫の中盤、急に盛り上がってEndingを迎えるところは格好良い。
Nas / King's Desease II
[Nas / King's Desease II] 前作より、1年のインターバルでのリリースとなるNasの13作目。King's Deseaseシリーズの2作目となるが、この後、すぐにリリースされた次のアルバム含めて、3作連続でHit-Boyと組んでいる。2年で3作と50歳を目の前にして、制作意欲が湧いてきたようだ。引き続き、Trackはサンプリング多めでオーソドックスでストレートのになっている。このあたり、Hit-Boyとは大分、相性が良さそうで、Nasの力強く、伸び伸びとしたフローを聴くことができる。どの曲もクオリティ高めではあるが、Gues参加曲tでは、④でのEminemの圧巻のスキルが白眉となっており、また、久々になるLauryn HillのRapも力強い。
PinkPantheress / To Hell With It
[PinkPantheress / To Hell With It] UK南西部の都市、Bath出身でLondonを拠点とするSinger, Producer、PinkPantheressのデビューEP。プライベートでは20歳の大学生でもあり、母親からはケニアの血を受け継いでいる。17歳からGarageBandで曲作りを初めて、TikTokで曲の反響を確認してと、まさにZ世代を地で行くデジタルネイティブな人であり、一部の曲ではMIxingにMasteringまでこなしている。Trackは本人が影響を受けたという90年代終わりから00年代あたりのUK Garage, drum'n'bass, 2-Stepをもろに取り入れており、これにPinkPantheressの可愛らしく、ときに儚げなVocalがのっかっていて、何とも新鮮なサウンドになっている。10曲で20分以下と各曲がとても短くて、余韻もなくあっという間に次の曲に移る構成もデジタルっぽいと思う。BBCのSound Of 2022の1位にも選出されており、フル尺のアルバムにも期待したい。
Armand Hammer and The Alchemist / Haram
[Armand Hammer and The Alchemist / Haram] DC出身のBilly Woods, NYC出身のELUCIDによるHip-Hop Duo, Armand Hammerがご存じAlchemistと組んだ2021年春の作品。Duoとしての活動は2013年あたりからで、5作目のアルバムとなる。タイトルのHaramはイスラム教の教義で禁止されるもの(こと)でジャケット写真の豚肉を食べることなどが当てはまる。Alchemistらしいサンプリングを効果的に用いたシリアスなTrackに、二人の押しの強いRapが加わって、不穏な雰囲気を醸しだしている。ところどころ、終わりにかけて、Jazzっぽい曲や、緩くメローな唄がメインの曲があったりするが、全編にわたって遊びがない硬派なアルバムになっている。
Dave / We're All Alone In This Together
[Terrace Martin / We're All Alone In This Together] Daveの2年ぶりとなる2nd album。デビュー作で、Brit Award, Mercury PrizeのAlbum Of The Yearを獲得し、チャート1位も記録して、UKでは時の人になったわけだが、この2作目も好調を維持し、既にチャート1位を獲得している。アルバムタイトルにあるように孤独や、様々な社会的問題に加え、売れてからの本人の苦悩など、引き続きLyricはシリアスなものになっている。Trackも哀愁感のあるダークなものから入っていくが、途中、Nigeria出身のWizkidをGuestに迎えたAfrican BeatとRegaeが混ざったような⑥あたりから、雰囲気が変わり、途端にカラフルでバラエティに富んだ展開となり、James Blakeとの⑨までが、個人的には面白いと思った。ただ、⑩以降、元のトーンに戻り、Albumは締めくくられる。DaveのRapは力強く、その分、Lyricの訴求力も増していると思う。
Terrace Martin / Drones
[Terrace Martin / Drones] Jazz Sax奏者、Producerとして知られるTerrace Martinのソロとしては5年ぶりのアルバム。今やRobert Glasperと並んでWestの音楽界の潤滑油となっているともいえる。コラボレーション、ゲスト参加が多い人でもあり、そんな人脈を駆使して、当作でもGuestがやたらに豪華である。Kendrick LamarやSnoopなどの使い方は勿体ない気もする。Jazzに軸足を置いてるTerraceではあるか、Jazzといえるのはスピリチュアルな⑨ぐらいで、これはGuestでもあるKamasi Washington風。Saxもほとんど吹いておらず、Produceに専念している。また、ほとんどの曲でVocalかRapが入っているのも意外な感じだ。構成面では前半はファンクなトーンの曲が多く、アップ〰ミディアムが中心となっている。後半にかけて、判りやすさより、音楽性を求めた聴きごたえのある曲が多くなっている。R&B, Hip-Hop, Jazzはもとより、キューバ、アフリカ、ハウスなど様々なジャンルの要素をMix UpしたBlack Music集大成みたいな作品である。
Summer Walker / Still Over It
[Summer Walker / Still Over It] Summer Walker、2年ぶりの2nd。デビュー作の好調さを維持していてチャート1位を獲得し、高評価も得ている。PhysicalのCDジェケットの写真で抱えている自身のお子さんの父親であるLondon On Da Trackが今作でも多くの曲をProducer参加しているが、破局してしまってるとのことで、内省的であったり、失恋を唄った曲が多いようだ。前作同様、ミディアム~スローのメロディアスな曲で占められており、Trackもオーソドックスなものがほとんど。Cardi BやAri Lennoxなど、筆者的には同類の女性VoをGuestに迎えているのが面白い。他にも豪華なGuest陣を迎えているが、あまり目立ってなくて、主人公はあくまでもSummer Walkerの唄であり、しっとりと表現力豊かに唄いあげている。
Isaiah Rashad / The House Is Burning
[Isaiah Rashad / The House Is Burning] Tennesse出身,30歳のRapper, Isaiah Rashadの5年ぶり2作目。この間、アリコール依存症になってたとのことで、リハビリにて復活してのリリースとなり、Lyricにもその辺りのことが織り込まれている。サンプリングやGuestなどサウス志向ではあるが、土着感はあまりなく、また、R&B寄りのメローでソウルフルなTrackも多数で、何とも言えないユニークなサウンドに仕上がっている。IsaiahのRapは唄うようなもの、語りかけるようなもの、パーカッシブなものなど硬軟織り交ざていて、これをほぼFreestyleでレコーディングしたとのことで、相当なスキルだということが判る。SZAやAmindiなど女性Voのはいったトラックも良いと思う。
Vince Staples / Vince Staples
[Vince Staples / Vince Staples] Vince Staplesの4年振りの4作目。長めのインターバルになってはいるが前作"FM!"と対になる作品らしく、同じく22分強の小品になっている。同様にメインプロデューサーはKenny Beatsで今回は全曲プロデュースを担当している。全曲、地味目でゆったりとした、ややダウナーなTrackにVinceのよれ気味の唄うようなフローがのっかっていて、これを切れ目なく繋いでいるので、全部で一曲みたいに感じられる作品になっている。Westside感はあまりなくて、代わりに温かみを感じられるTrackも少なくない。Lyricはアルバムタイトルにあるようの、本人の半生を語った内省的でコンシャスなものになっている。
Mach-Hommy / Pray For Haiti
[Mach-Hommy / Pray For Haiti] New Jersey出身、ハイチ系アメリカ人のRapper, Mach-Hommyの2021年春のアルバム。自身とWestside Gunn, Conway the Machineによって設立されたレーベルからのリリースとなり、そのレーベルメートのWestside GunnがExective Producerにおさまっている。2000年代から活動してはいたが、当作で初めて日の目を見た人でもある。全体感として、イーストコーストらしいコアなHip-Hopで、①の不穏なトーンで全体をしつつも、後半にかけて、メローであったり、哀愁感があったり様々。Mach-HommyのRapは低めで押しが強く硬派な印象で、対照的にWestside Gunnが高めの声で数曲でGuest参加している。④で、"つまようじをさしたりんごを・・"というサンプリングがはいるが、中山恵美子さんという70-80年代に活躍された歌手の曲であり、どうやってこの曲を見つけたのか気になるところだ。
Silk Sonic / An Evening With Silk Sonic
[Silk Sonic / An Evening WIth Silk Sonic] 人気、実力とも折り紙付きのBruno Mars, Anderson .Paakによる、何とも豪華なユニット、Silk Sonicによる1stアルバム。Bruno Marsの前作"24K Magic"の流れを組んでいるが、ただし、今回は時代をもう少し遡って、70年代ソウルへのオマージュ感溢れる作品になっている。ハッピーでスイートなR&B作品であり、ストリングスやブラスがはいったTrackはゴージャスで煌びやか。メロディもキャッチーで馴染みやすい。ユニット作ではあるが、Produce面含めて、全般的にBruno Mars色が強く、Anderson .PaakらしいHip-Hop色は皆無でVocalに専念している。また、Booty Collinsが数曲において声で参加しており、花を添えている。コロナ禍の陰鬱とした空気をぶっ飛ばそうという気概が感じられる作品。同じような曲が並ぶが、30分強とコンパクトにまとめられているので、一気に聴きとおせる。
Drake / Certified Lover Boy
[Adele / 30] Drakeの3年振りの作品。スタジオアルバムとしては6作目となり、今回も21曲、86分今日の長尺になっている。今回に限ったことではないが、1枚のアルバムを何年も丹精込めて作り上げていくというアプローチをとらず、作り溜めた曲が一定数以上になったら、アルバムの形を借りてリリースしているという感じではないかと思われる。とはいえ、個々の曲のクオリティは決して悪くないし、かえってバラエティの富んでいて、最後まで惰性に陥ることはないのは流石。Drakeらしいアンビエントでダウナーのサウンドを基調にしつつ、Yebba(⑪)、Tems(⑯)、Ty Dilla $ign(⑰)などVocal Guest参加曲がアクセントになってる。大物Rapperも多数客演しているが、Lil Wayne, RIck Ross参加の⑱などはストレートで良いと思う。またBeatlesのMichelleを大胆にサンプリングした①によって、のっけからリスナーの耳を釘付けにすることに成功している。
Adele / 30
[Adele / 30] Adeleの5年ぶりの4作目。発売後3日間で2021年最大のヒットとなり、変わらぬ実力と人気を示している。前作リリース後、離婚を経験したこともあり、内面と向き合い、自己救済していく過程や、息子との親子愛がLyricや歌唱の込められており、心にダイレクトに響いてくる。サウンド面は今までのスタイルをベースに変化も加わっていて、一番ソウル寄りになっており、3曲でゴスペルっぽいコーラスが入ってくる。Producerは、おなじみの面々に加え、SaultのInfroが終盤3曲を担当していて、Adeleの空気感を維持しつつ、サウンド面の変化に一役買っている。歌唱面は成熟して穏やかな方向に向かいつつ、⑪などでは声を荒げて、感情を露わにしている。
Lil Nas X / Montero
[Lil Nas X / Montero] 2018年リリースのCountry Rap曲"Old Town Road"をヒットさせたLil Nas Xのデビューアルバム。一発屋と見られていたが、そうではなく、当作も大ヒットし、Grammy主要部門にもノミネートされている。2019年にジェンダーレスであることをカミングアウトし、物議を醸したが、Princeっぽいジャケットも含め、特にLyric面で、そちら方面の世界観を強く押し出した作品になっている。また、自身を曝け出すという意味か、アルバムタイトルの本名からとられている。Elton JohnやMiley CyrusをGuestに迎えたのもその一環であろう。ただ、曲自体は流麗でメロディアスな、聴き易いものが多く、これだけで十分に魅力的。Trackは小賢しい捻りがなく、唄物のそれに近くて、好感が持てる。Lil Nas XのRapは唄うようなフローであったり、普通に唄ってたりとストレートなRapは無し。⑮のMiley Cyrusとのデュオなんかは、切なさが染みてくる。
Remi Wolf / Juno
[Remi Wolf / Juno] LAを拠点に活動するSinger, Remi Wolf(25歳)の1stアルバム。2019年あたりからシングルリリースを開始し、今年2021年にアルバムデビューとなった。唄だけでなくSong WritingとProduceにも加わっていて、手作り感の強いインディ臭漂う作品ではあるが、意外にもリリースはIslandからだ。とにかく明るくてカラフルなガールポップで、全曲ノリの良いアップな曲になっている。バックはGuitarがフィーチャーされたバンドサウンドで、ファンクなところも少々。ジャンルは違うが毒気を抜いたM.I.A.みたいな感じもする。歌詞は身の回りのことを触れたものがほとんど。なお、タイトルのJunoはCDジャケットにも写っている飼い犬の名前とのことだ。
Valerie June / The Moon And Stars: Prescriptions For Dreamers
[ Valerie June / The Moon And Stars: Prescriptions For Dreamers] 前作で広く知られるようになったValerie Juneの4年ぶりの3作目。引き続き、全曲のWritingも担当し、Producerとしても名を連ねている。今作もゆったりと落ち着いてオーガニックなバンドサウンドに一部、ブラスやストリングが加わって豊潤な印象を与えている。曲調もRoots MusicにR&B, Blues, Folkとアメリカ南部音楽を集大成したようで、この辺も変わらず。ただ、ちょっとしたサイケな味付けがあるので、古臭い感じはない。Valerieの唄は独特の声でしっとりと穏やかなものだが、⑥あたりではシャウトも聞かれたりもする。(あまり、合ってる気はしないが、、)
Leon Bridges / Gold-Diggers Sound
[Leon Bridges / Gold-Diggers Sound] Leon Bridgesの3年ぶり3作目。前作ではGrammyを獲得したが、今回もノミネートされている。タイトルのあるGold-DiggersとはLAにあるLeonお気に入りのHotel兼Studioの名称で、ここに住んでRecordingまで行ったとのこと。25歳でのリリース当時、年の割には渋いと話題になったが、30歳台になった今でも、まだまだ年に比べて渋く、引き続きのレトロ・ソウルが堪能できる。その前作同様、Ricky ReadとNate Mercereauが全曲Produceしているが、Jazzっぽい曲が増えたり、Guest参加を迎えたり、また⑤みたいなSadeっぽい曲や中国風?な旋律が聞かれる⑫もあったりして、ちょっとした変化をつけている。また、Vocalを少し抑え気味にしているのも前作との違いと思われる。
Dawn Richard / Second Line
[Dawn Richard / Second Line] NO出身でSinger, Song Writerとして活躍するDawn Richardの2021年夏リリースのソロ作。Indyをベースに6作目となるようだ。全曲本人作であり、Produceまで一部こなしているが、音楽一家出身で、このへんの素養を持ってる人であり、ミュージシャンだった父のFrankもPianoで⑪に参加している。また、Reality Show出身のGirls Group,"Danity Kane"のメンバーも続けており、こちらを含めると既に15年を越えるキャリアになる。当アルバムリリース時で27歳ではあるが中堅と言って良さそうだ。Trackのほうは、シンセに低音重視のElectro全開で、なかなかにFuturisticであり、サイバーな感じなCDのヴィジュアルどおりで、カッコよい曲が多い。これにところどころ、出自であるサウスっぽいメロディラインやリズムが絡んで、音の広がりを生んでいる。中低音が多い唄のほうも曲によって表現が様々で、こちらも経験の賜物かと思う。
Migos / Culture III
[Migos / Culture III] Migosの3年ぶりの4作目はCulture3部作の締めくくり。前作の2枚組ほどではないが、今回も19曲75分の長尺アルバムとなっている。また、2年リリースが遅れたらしく、故人となってしまったJuice WRLDやPop Smokeのゲスト作も含まれている。印象的には過去2作の継続で、3連RapとMC3人による掛け合いが核となっていて、安定感やまとまりの良さは流石。哀愁漂うTrackも相変わらずではあるが、かえって、全体としてはやや単調気味であり、Juice WRLD参加(⑬)のEmo Rap、Pop Smoke参加(⑱)のBrooklyn DryllやなんとJustin BieberがVocal参加した⑪などがちょっとしたアクセントになっている。
Jam & Lewis / Volume One
[Jam & Lewis / Volume One] 80年代より活躍し、Produser TeamとしてR&B史を代表する輝かしい実績を築いてきたJam & Lewisの意外にも初リーダー作。GrammyのProducer Of The Yearにも最多11回ノミネートされている(受賞は1回)。単なる懐古趣味的なアルバムだろうという先入観を大きく裏切る素晴らしい作品に仕上がっている。本人たちはProduce専門なので、人脈を駆使して、全曲、唄のGuestを迎えており、これが、これ以上望めない豪華なラインナップになっていて、しかも、全員が個性そのままに期待以上の仕事をしている。特にSounds Of BlackessやBoyz II Menあたりは懐かしい気もする。Trackは、かつての王道R&Bそのもので、ファンクな曲、ソウルフルな曲、しっとりとしたバラードなど様々で、皆、きちんと作りこまれている。目新しさは皆無であるが、安定感は抜群で、たまにはこういうアルバムの良いと思う。
Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert
[Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert] 前作が高評価で、メジャーな存在となったLittle Simzの2年ぶりの4thアルバム。その前作に引き続き、Saultより、InfroがProducerとして参加し、今回は全曲Produceしている。いままでの路線を踏襲しつつもスケールが二回りくらい大きく、豊潤になった印象で、Hip-Hop, Soul, Funkをベースに、荘厳なオーケストラや、ElectricやAfroにと、振り幅は相当に広い。また、すべてのTrackがキャッチーでカッコ良く、それだけで楽しめる。Infroの才能は相当なレベルだと思う。Little SimzのRapは、基本、低体温で、ただ数曲では力強さも魅せている。また、これもSaultより、2ndのリリースが迫っているCleo SolがGuest参加し、透明感のあるVocalを披露している。対照的に、Album TitleにあるようにLyricは内向的/内省的で、その対比も興味深い。
Jorja Smith / Be Right Back
[Jorja Smith / Be Right Back] デビュー作が高評価だったJorja Smithの8曲入りEP。予想外に間が空いて、3年ぶりのリリースとなる。前作と大きく方向性が変わっているわけではなく、ゆったりめでAccousticなサウンドにGuitarをフィーチャーしたTrackがメインとなっている。ただ、R&B風味はうすれているかもしれない。抑制の効いて落ち着いたVocalは、前作よりアンニョイですこしダウナーなところはあるが、暗い感じでは無い。26分弱の小品ではあるが、魅力は十分に伝わってくるし、2ndアルバムを期待したいと思う。
Flying Lotus / Yasuke
[Flying Lotus / Yasuke] Flying Lotusの2年ぶり、7作目となるアルバムは、Netflixアニメ「弥助(Yasuke)」のサントラとなった。織田信長に仕えた黒人侍を主人公にして、当時の日本を舞台にし、ファンタジー要素を盛り込んだアニメである。なので、いつものFlying Lotusのエレクトロ/クラブな雰囲気に和風なメロディや和楽器風の音色など和風テイストが大胆に取り入れられている。また、輸入盤のCDジャケットの帯や背表紙も日本語になっている。全編、Programming, , SynthesizerによるTrackで、ところどころThundercatなどの楽器演奏が加わっており、サントラなので、唄やRapはほんの少々となっている。映像とともに楽しむべきではあるが、音楽だけでも、それなりに楽しめる作品となっている。
Laura Mvula / Pink Noise
[Laura Mvula / Pink Noise] Laura Mvulaの5年振り、3枚目のスタジオアルバム。過去2作のJazz, Classic寄りで静謐な作風から、大きくイメチェンを図っており、全編、煌びやかで派手なシンセポップで、だいぶそっちに振り切った作品になっている。また、全体的にベースが強めなところも特徴的だ。構成は乗りの良いUp中心にMedium, Slowが少々。80年代R&Bを想わせる曲が多く、⑨などは"Billy Jean"っぽいところもあったりしているし、⑧ではSimon NeilとのDuetで新しい側面を見せている。Lauraの力強く切れの良いVocalも以外に合ってると思うし、清々しさまで感じることができる。
J. Cole / The Off-Season
[J. Cole / The Off-Season] 今や、Top Rapperの一人となったJ. Coleの3年ぶりとなる6作目。タイトルはプロスポーツなど使われるOff-Seasonのことで、休みをとって本番に備えて研ぎ澄ますみたいな意味のようだ。なので、過去の作品とは様相が違っていて、まずは外部ProducerやGuestを多く迎えている点があり、おかげで以前よりOpenな印象を受ける。LyricもStory Tellingな作風から、言葉遊びや高度なライムの組み立てに比重を移している。全体的にTrackは手堅いつくりのゆるめな感触で、メロウなものが多数。Rapでは、さらに磨かれた高度なスキルを披露しており、さらには余裕をも感じさせる。派手さは無いが、プロ好み、ディープなファン好みの作品である。
St. Vincent / Daddy's Home
[St. Vincent, Daddy's Home] 2000年代から活躍する女性Singer, Song WriterのSt. Vincentの3年半ぶりのアルバム。バンドではギターも弾き、Drum担当のJack Antonoffとともに全曲Produceしている。知能犯として収監されていた父親の釈放を契機に、その父親と過ごした70年代へのオマージュをコンセプトにしたアルバムになっており、本人もInspireされた70年代の楽曲をSpotifyで公開している(Black MusicではStevie Wonder, Nina Simmon, Pointer Sisterあたりが含まれている)。そんなノスタルジック感溢れるレイドバックした作品で、RockをベースにR&B, Popsっぽい曲も少々。全体的にミディアム-スロー中心で、抑え気味でときどきEmotionalになるSt. Vincentの唄と一体となっている。Lyricはプライベート感が強いものが多そうだ
Greentea Pang / Man Made
[Greentea Peng / Man Made] London近郊Bermondsey出身のSinger, Greentea Pengのデビューアルバム。年齢は25-26歳@2021とのこと。アラブ人の父とアフリカ人の母を持ち、風貌や音楽性からは父の血筋の影響も窺える。自身で作風をpsychedelic R&Bと表現しているが、日本でいうようなサイケというより、エスニックな印象を受ける。敢えて例えるなら、呪術性を弱めたErykah Baduといった感じで、本人も影響について言及している。ゆったりとして揺らいだような曲が多く、5人編成のバンドによるTrackはよくよく聞くとジャズ、レゲエ、インド音楽、エレクトロなどのジャンルをまたがった多彩なもの。これにGreantea Pengの抑えたVocalが加わり、中毒性を強めている。
WRD / The Hit
[WRD / The Hit] Greyboy AllstarsのRobert Walter(org), The New MastersoundsののEddie Roberts(g), LettucedのAdam Deitch(ds)によるTrio、WRDの初アルバム。バンド名は3人の頭文字をとったもの。Adam DeitchあたりはHip-Hop Artistとの共演もあったりするが、こちらの作品はヴィンテージ感たっぷりのファンクでソウルフルなものであり、全曲、Insturumentalでの構成であり、曲調もUpでのりのよいものばかりである。高度なテクニックに裏打ちされる3人の演奏が紡ぎだすグルーブが心地よく、ライブハウスで一杯傾けながら、聞けたら、最高だと思う。
Brockhampton / Roadrunner: New Light, New Machine
[Brockhampton / Roadrunner: New Light, New Machine] 自称Boys BandのBrockhampton、2年ぶりの6作目。Netでリリースしてきた曲を中心にまとめたものらしい。Danny Brown, JPEGMAFIA, A$ap Rockyなどをゲストに迎えたこともあり、今までよりHip-Hop色が濃くなっている。それだけでなく、Rockを前面に押し出した曲もあるし、Charile Wilsonをフィーチャーしたファンクな⑦など、曲調は様々で、相変わらずの賑やかさである。また、穏やかなヒーリング曲の⑩では久々にChad Hugoの名前をクレジットに見かけた。全般的には明るくてPopではあるが、乱射事件を取り上げた⑪、もろゴスペルでほぼアカペラな⑫、メランコリックな⑬とつづくあたりで、それだけではないところも示している。
Gallant / Neptune
[Gallant / Neptune] 2016年のデビューアルバムが高評価だったGallantの8曲入りEP。今年、29歳になるということで、青臭くなく、かといってまだ落ち着いた感じでもなく、ちょうど、脂がのっているところのようだ。今回はカナダ人のStintがフルプロデュースしており、耳障りが良く、Popで美メロなスロー曲で占められている。Gallantの唄は、繊細なファルセットに、中域は甘い感じで、押しつけがましくなくて、心地よい。Brandy, VanJessなどの女性VoとのDuetでは、より豊かな厚みが感じられる。Trackは奇をてらわず、古臭くもなく、Gallantの唄を控えめに盛り上げている。
H.E.R. / Back Of My Mind
[H.E.R. / Back Of My Mind] USはベイエリア出身のSinger, H.E.R.(Having Everything Revealedの略とのこと)の意外にも1stフルアルバム。(イメージでUKの人かと思ってました。) 24歳ながら、Grammy2回にAcademy1回受賞と実績としては十分で、満を持してのリリースと言えるのではないか。そんなおまたせ感を払拭するように21曲79分の大作になっている。彼女の囁くようなVocalをフィーチャーしたミディアム~スローの静謐で、やや茫洋としたTrackがほとんどを占める。そんな中でもThundercat, Kaytranadaらによる⑥などはカッコよく、数曲でのRapper, Male Singerの客演で変化をつけている。また⑫⑮⑯など高音多めの曲では唄い方がAlicia Keysに似てる気がした。全体的には、どれも佳曲ではあるが、曲調が近いので、全体としては長いかもしれない。
Madlib / Sound Ancestors
[Madlib / Sound Ancestors] 多様なアーティストとのコラボレーションで知られるベテラン・プロデューサー、Madlibが長年の友、Kieran Hebden と組んだアルバム。アルバム。CDジャケットには"arranged by Kieran Hebden"と記されている。Madlibがここ数年作りためた100以上のBeatやStudio Sessionなどの素材をKieranが編集・アレンジして、仕立て上げた作品である。Madlibの作り上げる太いビートが中核となるが、曲調はロック、ソウルをメインにスパニッシュ、アフリカン、スピリチュアルなものや瞑想的なものなど様々。アクセント的にVocalやVoiceが加えられている。二人が敬愛するJ Dillaに捧げたTrackもある。密室的で頭の中で作りました、という印象はあるものの、高次元でのコラボレーションが楽しめる。
Doja Cat / Planet Her
[Doja Cat / Planet Her] California出身のRapper, Singer、Doja Catの一年半ぶりの3作目。2018年デビュー以来、直実にステップアップし、コンスタントなアルバムリリースと勢いのあるアーティストである。Nicki Minaj路線のビッチな印象の人ではあるが、今作では、Popな方向に重心を移しており、より広いオーディエンスへの訴求を狙ったように思える。本人もRapは抑えめで、唄が多めになっている。このVocalが攻撃的なだけでなく、可愛らしい歌声など、いろいろ唄い分けており、器用な側面も魅せている。Trackはミディアム~アップが中心となるが、ラテンフレーバーな曲や、後半にはしっとりとしたスローもあったりとバラエティに富んでおり、同じような曲は一曲たりとも存在しない。Guestとの共演では、それっぽいWeeknd参加曲も良いが、ラストのSZA参加曲が軽快でカッコよく、ストリーミングでもダントツの再生数になっている。
Tyler, The Creator / Call Me If You Get Lost
[Tyler, The Creator / Call Me If You Get Lost] 前作ではGrammyも獲得し、現代Hip-Hopにおける最重要人物の一人となっているTyler, The Creatorの2年振り6作目。その高評価だった前作と、全体感はそうは変わらないが、唄からRapへと軸足を戻したのが最大の特徴となっている。また、DJ Dramaが各所で煽りを入れていて、彼のMix TapeシリーズのGangsta Grillzへのオマージュであることも判る。Trackはホラーな部分も少し残っているが、全般的にはメローで、Fluteを使った曲などノスタルジックなものが多く、リラックスした印象を受ける。Lyricでは、これまでと打って変わって、成功した自分をテーマにした曲が多い。Rapのほうは撚れたというか惚けたというかで、こちらは今まで通りだ。
Hiatus Kaiyote / Mood Valiant
[Hiatus Kaiyote / Mood Valiant] 前作の2作目が高評価で一気にメジャーな存在になったHiatus Kaiyoteの6年ぶりの3rd。ライブの忙殺されたり、VoのNai Palmの病気があったり、コロナ禍があったりと大分インターバルが空いてしまったが、そのぶんじっくりと制作に時間をかけたアルバムになっているようだ。Rock, Jazz, Funk, R&Bをミックスしたようなサウンドはそのまま、ブラジルからArthur VelocaiをGuestに加えて、⑥などではストリングスを採用して、変化をつけている。昔の曲、ライブで使っている曲、最近の曲など様々だが、結成ほぼ10年ということで、かなりの一体感のある作品であり、バンド演奏とは思えない凝った構成と演奏でのテクニックは流石である。今まで以上に、力強さや意思のようなものも感じられる。
Genesis Owusu / Smiling With No Teeth
[Genesis Owusu / Smiling With No Teeth] Ghana生まれで2歳の時にAustraliaに移住したというGenesis Owusuのデビューアルバム。アルバムジャケットのインパクトに引けをとらない、押し出しの強さを持った作品になっている。敢えてジャンル分けするとアフロパンクになるのだが、曲調のふり幅は相当に広い。軽快なロック、メローなR&B、キャッチーなポップ、メロディアスな曲に、オルタナっぽい曲など、本当に多様な構成になっていて、それでいて、どれも判りやすいので、万人受けしそうな印象を受ける。Rapと唄が半々くらいであるが、こちらは割と控えめで、Rapはややゆるめで唄うような感じ。唄はファルセットを多く、一部エフェクトを使ったりと飽きさせない工夫が施されている。今年(2021年)に23歳になるようなので、今後がまだまだ期待される。
Slowthai / Tyron
[Slowthai / Tyron] デビュー作が高評価だったSlowthaiの2年ぶりとなる2作目。本人の1st nameをタイトルにしている。2部作になっていて、大文字タイトルの前半は前作同様、社会への不満やDrugなどをテーマにした曲が続く。後半は、自身の内面に向き合った曲が多い。サウンドは引き続き不穏な印象ではあるが、特に後半、優しい印象のTrackが増えたように思える。Slowthaiのすこしよれ気味の語り掛けるようなRapには、そんなTrackが合っている。Guestはこれも引き続きのSKeptaやJames BlakeといったUK勢に加え、A$ap RockyにDenzel CurryとUSへの進出も視野にいれていそうだ。
Joyce Wruce / Overgrown
[Joyce Wrice / Overgrown] LA出身のSinger, Song Writer, Joyce Wriceの初フルバム。自身のインディレーベルからのリリースである。母親が日本人ということで、表情には日本人の面影が残っている。ただ、サウンドのほうは今どきの王道R&Bで、アップ、ミディアム、スローがバランス良く配されている。D'Mileがメインプロデューサーなので、Trackのクオリティは安定しており、その中で尖った曲も数曲あって、飽きさせない。また、Lucky Daye, Freddie Gibbs, Westside Gunn, KAYTRANADA, MndsgnといったGusetも通好みでアルバムに幅を持たせている。既に28歳ということで、若くてキラキラという感じではないが、透き通って芯のある歌声はなにものにも代えがたいし表現も豊かだと思う。⑬で突然、日本語の歌詞がでてきて、あ、そうだったんだなと思うが、それ以外は和なところはない
Serpentwithfeet / Deacon
[Serpentwithfeet / Deacon] Serpentwithfeetの3年ぶり、2作目。前作に比べて、インダストリアル色はなくなり、エクスペリメンタルなところも抑えめと、大分、印象が変わり、穏やかで、聴きやすい作品になっている。本人もソフトで優しいものを作りたかったと言っているが、まさにその通りのアルバムである。ただ、アンビエントで荘厳な雰囲気と高音のVocalにゴスペルチックはコーラスは前作から踏襲されており、前半は、特にその印象を受ける。クラシックがかった部分も少し残っている。後半の⑥あたりから、より、Popになり、⑪なんかはラテンぽいところもある。Produceは前作にUKより、引き続き、SamphaとさらにLil SIlvaも参加している。本人とボーイフレンドが登場する、ゲイを前面に押し出したジャケットにひるまずに、良質なR&B作として是非、聴いてほしい。
R+R=NOW / Live
[R+R=NOW / Live] Robert Glasper率いるユニット、R+R=NOWのライブアルバム。3年前にリリースされた1作目からの4曲と追加の3曲での構成となる。ちなみにメンバー構成もそのまま。今回もTerrace MartinがSaxが効けるのはラスト1曲だけで、他はSynthesizerとVocalでの参加となる。サウンドは前作とあまり変わらず、エレクトリック・ジャズをベースに、VocalとSynthesizerがアクセントととなっている。VocalはVocoderだったり、エフェクターをつかったりと生音声は使わず、その分、フューチャリスティックな印象となっている。さらに全体としては、スペーシーで茫洋としたサウンドになっている。客席とのやりとりや後半にかけての盛り上がりはライブアルバムならでで、特にラストはWeather Reportっぽく面白い。
Celeste / Not Your Muse
[Celeste / Not Your Muse] California出身、UK育ちのシンガー、Celesteの1stアルバム。デビューは大分前から期待されていたそうで、26歳でやっとのリリースにこぎつけたとのこと。その分、デビューアルバムとは思えない落ち着きと完成度の高さを感じるUKソウル/ポップの秀作である。ジャマイカとイギリスのハーフということだが、あまり黒っぽくはないそのスモーキーな歌声でAmy Winehouseに比べられることが多いようだが、彼女のような破天荒なところはなく、どちらかといったら優等生っぽく感じる。Trackは語り掛けてくるようなしっとりとしたスローが多く、ミディアム、アップも数曲。Lyricは恋愛のことを唄っていて、せつなさがひしひしと伝わってくる。
Robin Thicke / On Earth, And In Heaven
[Robin Thicke / On Earth, And In Heaven] 今やBlue Eyed Soulの第一人者ともいえるRobin Thickeの7年ぶりの7作目。今回、チャラさは捨てて、穏やかで爽やかな印象の作品になっている。ラテン、ボッサ、プリンスっぽいファンク、ソウルフルなバラードやJazzyなバラードなど曲ごとに様々なジャンルの曲が散りばめられている。美メロ曲が多く、また、全てにおいてTrackはうるさすぎず、Robin Thickeのファルセット多用のVocalもあっさりとしているので、ゆったりとした気分で聴くことができる。①なんかしみじみとして本当に良いと思う。オリジナリティ云々や新奇性は忘れて、心地よい楽曲に身を委ねましょうというアルバム。
Jon Batiste / We Are
[Jon Batiste / We Are] Disney映画"Soul"'(日本だとソウルフル・ワールド)で2021年のGloden GloveのBest Score Motion Pictureを受賞したり、CoachのFall 2021 Collectionに登場したり、はたまたTVショーのハウスバンドのリーダーをつとめたりと、ちょっとした時の人になっているJon BatisteのR&B作。New Orleans出身でJazz Pianistとしても活躍しており、34歳ということで既に経歴も豊かな人である。当アルバムは、そんな背景からの想像を裏切らない、Old Soulの逸品となっている。ソウル、ファンク、ブルースあたりがベースになったアーシーなサウンドを基本に、①などはマーチングバンドやゴスペルを交えた荘厳な曲だし、Trombone Shortyを招いた⑥はJazzyで洒落ていてカッコ良い。続く⑦はPianoメインのJazz Instrumental曲、⑧はHot 8 Bras Bandを迎えたメローなナンバー、⑧はMavis Staplesによるモノローグと中盤で変化をつけている。
Th1rt3en and Pharoahe Monch / A Magnificent Day For An Exorcism
[Th1rt3en and Pharoahe Monch / A Magnificent Day For An Exorcism] Pharoahe Monchがロック畑の Daru Jones(ds), Marcus Marchado(g)と組んだトリオ、Th1rt3enの1st アルバム。前者はJack White, 後者はAnderson.Paakなどとの共演で知られた人のようだ。基本的トーンはストレート気味のロックをベースに、Monchが緩急取り混ぜだRapを繰り広げたもの。これに加え、⑫ではメロー、⑬では静謐で穏やかな唄がフィーチャーされている。Lyricのほうは大量消費主義、政治腐敗、警察の横暴、人種不平等などシリアスなテーマが多く、これをMonchが説き伏せるようなフローと、時に唄とで訴えかけてきている。
Jazmine Sullivan / Heaux Tales
[Jazmine Sullivan / Heaux Tales] Jazmine Sullivanの約6年ぶりの4作目。ダイエットに成功したそうで、ジャケットを見ると顔がシュッとして、若返ったように思える。(といっても、まだ33歳)。そんなジャケットからは手抜き感を感じるが、内容も、良い意味で抜きがあり、敢えて最小限の伴奏で最大限のグルーブを醸し出している。Guiterが効果的で、生楽器の強みを活かしたゆったりとしたTrackに、Jazmineの力強いVocalが何とも心地よく、癖になる。出自であるGospelの影響も唄いまわしやコーラスで強く感じることができる。14曲中6曲はInterrude的な女性によるモノローグになっていて、自己肯定のようなことが語られており、全体としてはコンセプチャルな作品になっている。ただ音楽面だけでもクオリティは相当高いと思うし、個人的には、かなりハマっている。
Kid Cudi / Man On The Moon III: The Chosen
[Kid Cudi / Man On The Moon III: The Chosen] Kid Cudiの7枚目にして、Man On The Moonシリーズとしては、10年ぶりの3作目。その歳月を感じさせないような連続性を持った作品であり、内向的で陰鬱な感じで打ち込み中心のTrackに、唄うようなRapという構成になっている。この10年で時代がKid Cudiに追い付いた感じで、現代の耳には、すっと入り込んでくる。変化したところとしてはTrapっぽい曲が増えたこと⑧でDrillを取り入れてることであるが、あくまでも自身のベースに融合させており、馴染みのProducerによる、統一感の高い作品になっている。また、内省的で救いをもたらすLyricにも着目すべきである。、特に後半に向けてメロディアスになってきて、聴くほどに染みてくる。
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