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BROCKHAMPTON / Iridescence
[BROCKHAMPTON / Iridescence] Brockhamptonの2018年リリースのメジャーデビュー作。ライブの予習で聴きました。ライブに登場したのは6MC(国人3人、白人3人)だったが、その他にもProducer, Graphic designer, Photographer, Web Designer, Managerまでが一員で現時点で総勢14人となる大所帯のクルーである。中心人物のKevin Abstractが立ち上げ、元はKanyeのファイサイトで集結したらしいが今はLAで活躍し、ユースカルチャーと結びついている。本人たちはBoy Bandを自称し、Light Field Hip-Hopに分類されることもあるが、そこに捉われない才気あふれる集団である。KevinがビートルズのSgt peppersにインスパイアされたと言っているが、Popで、賑やかで、エネルギッシュなHip-Hopになっており、オルタナ臭も漂う力作である。6MCが、曲ごとに入れ替わり、Rapを披露しており、そんなところも楽しい作品だ。
Playboi Carti / Die Lit
[Playboi Carti / Die Lit] ATL出身の22歳、playboy Cartiのデビュー作。(前作もヒットしたがmixtape扱いなので) 南部出身ながらファッションセンスが受けて、A$ap Mobの一員にもなっている。親友であるLil Uzi VertとともにMumble Rapと言われているが、本人も自覚しているようで、気怠くゆるいMCが特徴的。ほぼPierre Bourneによるゆったり目でシンセ多用のTrackは浮遊感があり、メローで心地よくもある。
Vince Staples / FM!
[Vince Staples / FM!] Vince Staplesの約1年半振りの3作目。22分強の小品で、タイトルのようにDJがはいったラジオのような構成になっている。音楽の幅を広げた前作に比べると、その前に回帰したようなわりとシンプルな作品で曲調も統一されている。Trackは軽快でライトなものが少なくないが、逆にLyricはそれなりにシリアスで、Westsideらしいものになっている。無名に近いKenny Beatsをメインプロデューサーに迎え、短期間で一気に使ったと思われる。
Saba / Care For Me
Chicago出身のRapper, Sabaの2ndアルバム。同郷のChance The Rapper(1曲ゲスト参加)の作品への参加経験もあり、最近のChicagoの流れを汲むオーガニックでストイックな作品。従弟であり、メンターでもある故John Waltに捧げられた作品でもある。生バンドで、Trumpetを多用したトラックは、MellowかつJazzyでかなり心地よく、メロディーはメランコリックで切ない。ただ、陰鬱な感じではないので、ゆったりとした気分で聴ける。音楽一家出身で父親がR&B歌手とのことで、ネオソウル的でもあり、音楽の素養がある人が作った印象を受ける。
Noname / Room 25
[No Name / Room 25] 前作のMix Tapeが高評価だったNo Nameのセルフリリースによるデビュー作。Credit情報が入手できないのだが、Song Writingは本人、ProduceはPhoelixが中心になっていると思われる。前作からの方向性は変わらないが、より生バンド志向になり、Jazz色が強く、Soul, Funk, Gospel, Classicの要素も聴き取れるような、何とも気持ちよいサウンドに仕上がっている。つぶやくようで落ち着いたRapや唄も相変わらずで、押しつけがましくないところが好ましい。コマーシャリズムに染まらずに、このまま進んでほしいものである。
Ella Mai / Ella Mai
[Ella Mai / Ella Mai] southwest London出身で24歳のVocal, Ella Maiのデビューアルバム。⑧でGrammyにもノミネートされ、順調なスタートを切っている。彼女をHookしたDJ Musard中心にProduceされた作品で、90年代のUS R&Bを下敷きにしたようなオーソドックスで耳なじみの良い曲が並んでいる。スローが中心でじっくり聴かせる曲が多く、見た目と違って中低域の落ち着いた声で唄っており、ちょっと若々しさみたいなものは期待しないほうが良いかもしれない。
Serpentwithfeet / Soil
[serpentwithfeet / Soil] Baltimore出身でNYで活動するSinger / Songwriter, Serpentwithfeetのデビューアルバム。見た目はごついがQueer Musicシーンの人で、音楽はクラシック的な荘厳さと劇場性を持つ。アンビエントで内省的な曲調で、そこの高音の唄と、自身の出身であるゴスペルチックなコーラスが載っている。ただ、唄だけ切り取るとR&Bではある。インダストリアルでエレクトリックなところもあって、かなり特異的な作品だと思う。
Anderson.Paak / Oxnard
[Anderson.Paak / Oxnard] Anderson.Paakの3年弱振りの3作目。DreをExecutive Producerに迎えたが、いわゆるWest Sideの強い影響は無く、Andersonの個性を活かした作りになっている。サンプリングを効果的に使いつつ、ベースはバンド指向になっている。サウンド的には70-80年代のソウルを下敷きにしたミディアム~スロー中心で、今まで以上にPopかつメローで聴きやすい。そんなTrackは本人はRapと唄を自由に行き来している。豪華ゲストが花を添えているところも聞き逃せない。
Earl Sweatshirt / Some Rap Song
[Earl Sweatshirt / Some Rap Song] Earl Sweatshirtの3年ぶり、3作目のCD。15曲全てが1-2分で、これを切れ目なく繋いでいるので、強く印象に残る曲が無く、ゆるっと始まって、いつの間にか終わっている感じのアルバム。自分的にはちょっと苦手な人ではあるが、今回あまりダークな印象はなく、ファンキーなTrackが多いので、今までで一番聴きやすい。ゆるめのRapは、語りかけるようで抑揚があまりないのが特徴的。Lyricは亡くなった父親に捧げた内省的なもの。自己Produce多数で宅録でもあり、引き続きパーソナルな作品となっている。
Teyana Taylor / K.T.S.E.
[Teyana Taylor / K.T.S.E] Teyana Taylorの4年振り2作目。2018年夏のKanye Westによる5週連続Produce作EPリリースの一つでもある。全体としての印象はメロディアスでオーソドックスなR&Bで、そこに初期のKanyeっぽい仕掛けが加わっている。Trackはスロー中心の構成となる。少し掠れた声色からはエロいAlicia Keysと言ってもいい気がするが、曲によって、様々に唄い分けており、表現力では28歳とは思えないベテラン感を出している。なお、タイトルはKeep That Same Energyの略だとのこと。
Kids See Ghosts / Kids See Ghosts
[Kids See Ghosts / Kids See Ghosts] Kanye Westが弟分のKid Cudiと組んだユニット、Kids See GhostsによるEP。2018年夏のKanyeによる5週連続Produce作EPリリースの一つでもある。Art Workはお馴染み、村上隆が担当している。あまり、作りこまずに短期間で作った生々しい印象を受ける作品で、一言でいうとインディロックを取り込んだAlternative Hip-Hopといった感じだ。唄とHip-Hopは半分ずつというところか。ダウナーで内省的なところもあるが、耳が馴染んでしまったためか、そこまでのダークさは感じられない。
Georgia Anne Muldrow / Overload
[Georgia Anne Muldrow / Overload] 1983年生まれで2004年デビューのVocal, Georgia Anne Muldrowの2018年最新作。半数以上の曲を自身でProduceし、Brainfeederからのリリースということで、注目を集めている。Erykah BaduやMos Defの作品にゲスト参加してた人で、アルバムの全体感も敢えて言うならErykah Baduに近いかもしれない。ただ、特定のジャンルやArtistに例えるのが難しい独特の世界観が展開されていて、こちらも敢えて言うならネオソウルということになるか。Lyricもコンシャスなものが多そうだ。曲調は、ところどころFunkであったり、Jazzyであったりでゆったり目で茫洋としたものがメインとなる。
Cardi B / Invasion Of Privacy
[Cardi B / Invasion Of Provacy] 2018年に大ブレークを果たし、既にQueenの風格も漂うCardi Bのメジャーデビュー作。2019年にはやっとCDもリリースされそうだ。ストリップクラブで働いていた過去を持ち、非DV経験やバイっぽいことを告白したりと、スキャンダラスなPrivacyを持つ人だが、それらをネタに成り上がりで威勢のいい、赤裸々LyricのRapを披露し、これが受けて、ヒットにつながっている。Bronx出身ということだが、そこまでハードコアなものではなくて、自身の出自であるLatin乗りの曲やTrap、Chanceと共演したそれらしいゆるめの曲、Kehlaniとのメローなスローなど、曲調は様々でTrackのほうも十分に楽しめる。
Nipsey Hussle / Victory Rap
[Nipsey Hussle / Victory Rap] Carlifornia出身, 1985生まれのRapper, Nipsey Hussleのメジャーデビューアルバム。Epic時代に不遇な時を過ごし、その後、Indyでブレークしての、最近では遅めのデビューとなる。Chart Actionも好調で、Grammyノミネートまでこぎつけている。最近売れ線のHip-Hopでは珍しく、West SideのシリアスでストレートなRap作品だが、適度にTrendを取り入れていて、懐古趣味的にはなっていない。豪華なGusetが目を引くが、そこに埋もれない力強いRapは好感が持てる。ちなみにArtist名は国人コメディアンのNipsey Russelからとっているらしい。
Tierra Whack / Whack World
[Tierra Whack / WhackWorld] 1995年生まれでフィラデルフィア出身のFemale Rapper, Tierra Whackのデビュー作。InstagramのStoryの長さに合わせた1分間の曲をインターバル無く15曲繋ぎ合わせた、つまり15分の作品。同じ構成のMVはGrammyにノミネートされている。ただこの構成は気まぐれによるものらしく、崇高なコンセプトなどが無いところがかえって清々しい。Trackは、ミニマルな感じで、緩やかで落ち着くようなものが多く、バックは楽器がベースとなっている。業界にメジャーなメンターがいるわけでもないので、どこの流派にも属さないユニークなところがある。(敢えて比較するならNonameあたり)。唄2:Rap1程度の割合なのだが、声と唄い方を曲によって使い分けているので、何人もマイクをとっているように感じられるが、もう一つの特徴だ。
Travis Scott / Astroworld
[Travis Scott / Astroworld] Travis Scott、2年ぶりの3rd Album。路線は今まで通り、Trapに軸足を置いてはいるがアンニュイでアンビエントな印象は薄れた気がする。前2作以上にGuestが豪華で、どこにどう使われてるか注意深く聴く必要がある(特に⑤)。Travis自体は唄とRapが半々くらいで、Autotuneをところどころ使っているのは今までどおり。個々のTrackが十分に作りこまれており、アルバムの統一感は維持しつつ、それなりバラエティに富んでいて、後半にも捨て曲がないので、かなりの聴き応えとなっている。
Kamasi Washington / Heaven And Earth
[Kamasi Washinton / Heaven And Earth] Kamasi Washington、2018年夏リリースの作品。EPを一枚挟んで、今回も3枚組(1枚はBonus)で、合計すると3時間を超える。半数以上の曲にOrchestraとChoirが参加した文字通りの超大作で、一大黒人音楽絵巻でもある。Accoustic Jazzをベースにしながら、Latin要素を強めにして、AfricanもMixしたような独特の世界観が提示されていて、ゆったりとしたスピリチュアルなTrackを中心に、曲自体はメロディアスでわかりやすいものが多い。それに加え、Vocalや各Musicicanのソロパートもきっちり織り込まれていて、本当にお腹いっぱいな内容なので、覚悟して聴く必要がある。
Young Fathers / Cocoa Sugar
[Young Fathers / Cocoa Sugar] Young Fathersの約3年振り、3作目。本人たちも標榜しているように、引き続きジャンルレスなサウンドで、明確に何かから影響を受けたと認識できないが、Hip-HopとUKロックを融合させたような曲が多く、これぞUKの音ということは言えそうだ。Popでありながら、シリアスでもあり、茫洋とした曲もあって、Trackの傾向は様々で掴みどころはないが確固とした主張は感じられる。Rapはほぼなく、唄中心で、時にGospelのようなコーラスを聞かせている。CDにはCreditは無いが、本人たちが Produceを行っていると思われる。
J.Cole / KOD
[J. Cole / KOD] J. Coleの2年ぶりとなる5作目。Sportifyのリリース初日ストリーミング数の記録を樹立するなど、多くの注目を集めている。アルバムタイトルは”Kidz On Drugz”, “King Overdose”, ”Kill Our Demonz”の3つの意味を持つらしく、Art Workもそんな感じになっている。というように、強いメッセージが込められたアルバムであり、Drug, SNS, 金に囚われることから逃れることを訴えている。また⑦では友人であるコメディ俳優kevin Hartの不貞にも触れている。このようにLyricに注目が集まっているが、Trackはほぼ本人によるProduceで、Sampling中心のJazzyでゆったりと落ち着いたものになっている。FeaturingでクレジットされているKill Edwardとは、J.Coleの別名であり、極めて私的な作品とも言える。
Blood Orange / Negro Swan
[Blood Orange / Negro Swan] 前作が高評価を集めたBlood Orangeの2年振りとなる4作目。本業のProducerとしても好調だが、今回も本人のSong Writing, Produceによる、密室的な作品になっている。ちなみにCDジャケットに移っているのは本人ではなく、黒人モデルらしい。Trackは楽器とデジタルをうまく融合していて、全体感はメロウでアーバンなものに統一されている。メロディのクオリティは高く、ファルセットを多用するDev HynesのVocalと相俟って、耽美的だ。Lyricは本人も言っているように、人種的、性的マイノリティをテーマにしつつ、Positiveなところもあって、一層パーソナル感を出している。ところどころの雑踏の音を使ったようなSEが、都会の孤独感をあらわしている気がする。
Stefflon Don / Secure
[Stefflondon / Secure] UKはバーミンガム出身のRapper, Stefflon Donの初Physical作。両親がJamaica出身ということで、Dancehall RaggaeにGrim, Hip-Hopなどをミックスしたような作品。なのでDanceに適したノリの良い曲が中心となり、Sean PaulやSizzlaもゲスト参加している。他にも時流のアンビエントな空気を持つ曲やサウスっぽいHip-Hop良くなども含まれていて、UKに留まらないマーケットを視野に入れているのが判る。攻撃的なルックスもあって、Nicki Minajの対抗馬となるか期待したいと思う。
Brandon Coleman / Registance
Brainfeederに移籍したKeyboard奏者、Brandon Colemanの2年振り2作目。Kamasi Washington(数曲にHorn隊として参加)やThundercatとともにLA出身のJazzミュージシャンから成るWest Coast Get Downの仲間でもある。本人も言っているように、Herbie Hancock, JB, Prince, P-Funkなどに影響を受けた賑やかかつ軽快でFunkなR&B作品になっており、Jazzを下敷きにし、Discoな雰囲気も携えている。本人のVocoderによるVocalや女性Voの唄がメインで、⑤などはRogerにささげられており、非常にそれっぽい。難しいことは忘れて、とにかく楽しもうよというアルバム。
Mac Miller / Swimming
[Mac Miller / Swimming] 2018年9月にOverdoseでこの世を去ったMac Millerが直前の8月にリリースしたアルバム。現時点での遺作ということになる。Ariana Grandeとの失恋の痛手や自身の薬物/アルコール依存に触れながら、⑤では"自分を大事にしよう"と言ってた矢先に本当に残念である。そんな極めて内省的で切ないLyricではあるが、Trackのほうは穏やかでFunkやJazzへの傾倒も感じられて、大変心地よく、フレンドリーだったという人柄が滲んでいる。Jon Brion中心とするProducer陣もMac Millerのよれた唄とRapにうまく融合させている。スロー曲中心ながら③⑦などのFunk曲がカッコよい。才能豊かな人だっただけに、惜しいし早すぎる。
The Internet / Hive Mind
一人減って5人になったThe Internetの3年ぶりのメジャー3作目。個人活動も好調で”Odd Future所属の”という枕詞がいらないくらいメジャーになり、一種の余裕が感じられる。Guestもなし、Produceも自身のみでの構成は、バンドとしての自信の表れであろう。抑制が効いて必要以上に盛り上がらないサウンドはまさにクール。TrackはJazzやLatinもとりいれつつ、hip-hop的感覚を忘れてないところが良い。Sydの静謐で浮遊感漂うVocaに加えSteve Lacyも数曲歌っている。
R+R=NOW / Collagically Speaking
[R+R=NOW / Collagcally Speaking] Robert Glasper率いるユニット、R+R=NOWのアルバム。ちなみにユニット名はReflect+Respond=NOWの略で、RobertがTribute AlbumにかかわったNina Simoneの有名な言葉にインスパイアされたものとのこと。1tp, 1kb. 2synth, 1bs, 1dsの6人構成。Terrace MartinがSaxが効けるのは1曲だけで、何故か主にSynthを担当している。構成としてはJazz演奏がベースとなり、曲毎にVocal, Rap, Spoken Wordなど趣向が凝らさていて,その辺含めて、Hip-Hop寄りの作りになっている。ただ、演奏自体が瑞々しく、力がこもっているところに好感が持てる。
Jorja Smith / Lost & Found
[Jorja Smith / Lost & Found] UK出身の21歳、Jorja Smith。Drake作品やBlack Pantherのサントラなどへの参加を経てのデビュー作となった。Song Writingも手がけており、LyricはPersonalで内省的だ。サウンド視点ではAccousticでOrganicで真っすぐなソウルアルバムになっている。瑞々しくも、年の割に抑制の効いて落ち着いたVocalが印象的で、なかなかの表現力を示している。中でもTom Mischの⑨などGuitarをバックにRap気味のVocalを披露し、良い雰囲気。曲調はスロー中心で、ダークという感じでもないので、ゆったりとした気分で聴くことができる。
XXXTentacion / ?
[XXXTentacion / ?] 20歳のRapper, XXXTentacionの2作目。チャート1位を獲得し、これからというところで、今年(2018年)6月に銃撃によってこの世を去ってしまったので、これが遺作ということになる。表面的にはMumble RapやEmo Rapなどにジャンル分けされる作風で、全体的にメランコリックで内省的。唄がメインの曲が半数以上を占めており、Guiterも良く使われていて、どちらかといったらRock特にGrungeに近い。そんな作品だが、聴いていて、暗い気持ちにならず、適度に心地良いのが不思議だ。
Ariana Grande / Sweetner
[Ariana Grande / Sweetner] Ariana Grande の2年振りの4作目。アイドル性とArtistとしての歌唱力という二律背反的な才能を持つひとだが、当作では大人っぽいArtworkからも明らかなように、ぐっとArtistのほうに寄せてきた。前者の象徴、Mar Martinは一曲のみで、代わりにPharrellが7曲をProduceし、軽妙なHip-Hop Soul、可憐なPop、流麗なバラードのバランスがうまい具合にとれたアルバムになっている。不幸な出来事にもめげずに、頑張っている彼女だが、クオリティをさらにあげてきたのは流石。
The Weeknd / My Dear Melancholy
[The Weeknd / My Dear Melancholy] The Weekndの2年振りとなるメジャー4作目は6曲入りのEP。前作ではPopでメロディアスでメインストリームなR&Bに近寄ったわけだが、今回はPopさは捨てて、ひたすらメランコリックでダークなトーンに統一されている。Title通りということになるが、本人の失恋が動機になっているらしく、LyricもPrivateなものになっている。スローなTrackはアンビエントかつエレクトロで、なかなか凝ったアレンジ。高音多用の突き刺さるようなVocalには鬼気迫るものがあるが、ずっと聴くにはつらいものがあり、長編アルバムでなくEPで良かったというのが正直な感想。
The Carters / Everything Is Love
[The Carters / Everytjomg Is Love] お騒がせ夫婦、BeyonceとJay-Zによるユニット、The Carterによるアルバム。シングルでの共演は過去にも有ったが、アルバムは初。ユニット名はFamily Nameよりとっている。Jay-Zの浮気を動機に各々のソロアルバム、そして共作と3枚作ってしまうのは流石。そんな先入観は置いておいて、期待以上の出来の作品になっている。二人から想像される攻撃性、華やかさ、派手さみたいなものは一切排除されていて、ゆったりとしっとりとした良曲が多いところが特徴的。タイトルにあるようにファミリー愛を焦点に置いている。どちらかといったら、Beyonceの唄が主役で、Jay-ZのRapは付加的なものに感じる。
Kanye West / Ye
[Kanye West / Ye] 2年ぶりとなるKanye Westの7作目。本人による5週連続Produce作EPリリースの一つでもある。7曲かつ短期間で作ったそうだが、クオリティはかなり高い。アートワークに書かれている”I hate being Bi-Polar, it’s awesome”のBi-Polarとは本人罹患中の躁鬱病ことらしく、そんな状況も曲にしている。他には仲間や家族への愛もテーマにしており、Lyricのほうは相変わらず自分大好きなKanyeらしい。逆にTrackのほうは、特に後半、初期の作品に戻ったような親しみやすさや感じられるメロディアス曲が続いている。Gospelへの憧憬も見え隠れしている。
Chris Dave and The Drumheadz
[Chris Dave and The Drumhedz] Jazz Drummer, Chris Daveの初リーダー作。Robert GasperのBlack Radioに参加したり、D'AngeloやMaxwellの日本ツアーに参加したりと客演での実績は十分すぎるほど。そんなChrisなので、アルバムはJazzベースのR&Bといった印象で、ところどころHip-HopもまぶしたBlack Musicのミクスチャー作となっている。半分以上の曲にはVocalがはいっており、その他にも純粋なJazz、アフロビート、Gospelっぽい曲など様々。アバンギャルドでスペーシーなところもあって、Producerとしての才能が十分に発揮されている。
Kali Uchis / Isolation
[Kali Uchis / Isolation] Columbia出身、Virginia育ちの25歳、Kali Uchisのデビュー作。Song Writingも手がけている。Latin志向な曲も少なくないが、ベースはR&B。ただし、Producerは他ジャンルからGorillaz, Badbadnotgood, Davis Andrew Sitekなども参加し、ファンク、新旧ソウル、テクノ、気怠いスロー曲など、かなりバラエティーに富んだアルバムになっていて、飽きさせない。それに加えて、Kali Uchisの可愛く可憐で、時々アンニュイなVocalが特徴的で最大の魅力だ。
Pusha T / Daytona
[Pusha T / Daytona] 3年ぶりとなるPusha-Tの3rdアルバム。Kanye Westによる5週連続Produce作EPリリースの皮切りとなった作品である。なお、もともとは前作の続きとして"King Push"というタイトルの予定だったが、作品を表わしていないとして、本人が変更している。また、ジャケ写がWhitney Houstonの浴室のものらしく、こちらも物議を醸している。このように内容以外での話題が豊富なのだが、中身はKanyeプロデュースらしいHip-Hop作で、時流にとらわれない面白いTrackが多く、力強く粘着質なPusha TのRapと合っている。LyricはDrugものやHip-Hop界を扱っているようだ。7曲21分の小品なのですぐ終わってしまうのが残念。
Leon Bridges / Good Thing
[Leon Bridges / Good Thing] デビュー作が好評だったLeon Bridgesの3年振り、2作目。レトロ・ソウル(60年代前半風)を彷彿させたデビュー作の流れを汲ん作品であるが、本人も言っているように音楽の幅を広げ進化させている。確かに、明るいアップな曲があったり、爽やかな曲があったりという変化はあると思うし、Hornも入った②なんかJazzっぽくてカッコよい。このあたりは、ProduceをRicky Readに任せたおかげか。ただ、①④のようなスローバラードがメインであることに間違いはなく、本当に沁みてくる。
Vicktor Taiwo / Joy Comes In Spirit
[Vicktor Taiwo / Joy Comes In Spirit] Nigeria出身、East London育ちのSinger / Song Writer, Vicktor Taiwoのデビューアルバム。出身地アフリカの色は微かで、今どきのアンビエントでジャンルレスな作品。エレクトロ風味のゆったりとした曲がほとんどで、以前のWeekndみたいなところもあれば、祝祭的な曲、茫洋としてメロディを聞かせる曲など、凝った作りの曲が多い。また、多重音声と加工も多用しているのも特徴的だ。本人の唄は囁くようなものや強めに歌い上げるものなどさまざまでつかみどころの無い印象。CDクレジットが無いので正確には判らないが、極めて自家製な印象を受ける。
Camila Cabello / Camila
[Camila Cabello / Camila] Cuba出身、Florida育ちの21歳、Camila Cabelloのデビュー作。Song Writingも手がけている。Fifth Harmonyというガールズグループのメンバーでもあったとのこと。そんな出自からも明らかなように、R&B, Hip-HopとLatin Popがミックスされた作品になっている。Latin志向の派手で尖がった曲もあるが、Accoustic GuiterやPianoを使ったしっとりした曲もあったりして、予想外に浮ついかず地に足がついた印象を感じる。Vocalのほうもかわいく歌ったり、スローで歌い上げたりと様々な表情を魅せる。本人が移民なだけに、かわいいだけでなく、Trumpの移民政策に対峙する姿勢をみせたりもしている。
Post Malone / beerbongs & bentleys
[Post Malone / beerbongs & bentleys] Texas出身のRapper, Post Maloneの2作目。チャート1位を獲得している。髭もじゃの風貌からのいかつい印象とは真反対で、バンドサウンドによるメローでメロディアスなR&B作品である。ゆったりとした曲がほとんどで、本人は唄に専任しており、唄声も一聴しただけでは、黒人の若者が唄っているかと思わせるような、せつなさと若干の清涼感を感じる。ロックを経た人であることを感じさせつつ、現代のR&Bのトレンドであるアンビエントで茫洋としたところを違和感なく融合させている。今のところ、今年一番のサプライズ。
Tinashe / Joyride
[Tinashe / Joyride] Vocalだけでなく、Dancer/Song writerとしての才能も持つTinasheの4年振りのphysical作。Visual Queen/Street Queenとしての称号を得る才色兼備なひとでもある。当作は2015年9月の告知より、途中、配信のみのアルバムを挟みつつ、2年半を経てやっとリリースされた。浮遊感のあるゆったりとしたTrackに囁くようなVocalというスタイルは維持しつつ、ダークで気怠い歌声の曲なども多く、曲調は様々。加えてシャープな地声も披露し、Trackによって唄い分けている。日系VocalのYukimi Nagano率いるSweedenのバンドLittle Dragon参加するElectro Popな曲もあったりして、37分弱ながらかなり濃密な作品。
Black Milk / Fever
[Black Milk / Fever] Detroit出身のRapper / Producer, Black Milkの2018年春リリースのアルバム。全曲Song Writing, Produce以外にMixing, Recordingまで本人がこなした極めてプライべートな作品。同郷のDweleに加え、Chris Dave, Aaron Abernathyなどがゲスト参加している。一言でいうと、バンドによるHip-Hopなのだが、底にはグルーブが流れており、Jazz, R&Bなど黒人音楽を違和感なくミックスしたサウンドは、ただただクールかつファンクでカッコよい。本人の抑えたRapも絶妙にマッチしている。
Tom Misch / Geography
[Tom Misch / Geography] London出身のシンガー, Tom Misch(21歳)のデビューアルバム。全曲Produceに加え楽器もこなし、マルチな才能を発揮している。J-Dillaの影響を受けたという片鱗をうかがわせる、Jazz, Disco, Soul, Hip-Hopなどを取り入れたアコースティックなサウンドの上に年齢に似合わない落ち着いたVocalを聴かせてくれる。全編Popで、Upな曲はノリも良く、スローな曲はメローでしっとりとし、とにかく軽妙洒脱なところが、都会的で楽しい。Stevie Wonderの⑦などInstrumental曲も混ざってたりしている。
Janelle Monae / Dirty Computer
[Janella Monae / Dirty Computer] 女優業も好調なJanelle Monaeの4年半ぶり3作目。前作までの組曲作品と違い、新しいコンセプトでの作品。制作陣は引き続きWondaland ファミリーの盟友Nate "Rocket" WonderとChuck Lightningが中心となっており、豊饒なサウンドを紡ぎだしている。晩年のPrinceと交流があったとのことで、⑧⑭あたりがPrinceっぽい曲になっている。他にもPopでFunkでノリの良い曲が多く、それだけでも単純に楽しめるが、Lyricのメッセージ性は強い。また、なんとBrian WilsonがOpening曲でビーチボーイズっぽいコーラスでを聴かせてくれている。
Migos / Culture II
Migosの1年振り、3作目。2017年のHip-Hopを代表することとなった前作からの続作ということになる。好調さを維持しつつ短いインターバルでのなんと2枚組リリースなのだが、Producerは、ツアーDJのDJ Durelとメンバーの一人Quavoが中心であり、ツアーをしながら短時間でレコーディングしていったようだ。なので、渾身のアルバムというより、絶頂期の記録と考えたほうが良いのかもしれない。ただ、クセになる3連Rapに3人のコンビネーションの良さは相変わらず。、単調気味な作品ではあるが、サウスのメジャーどころが勢揃いしたようなゲスト陣が適度なアクセントを加えている。
Craog Davod / The Time Is Now
[Craig David / The Time Is Now] 前作がヒットしたCraig Davidの7作目。1年4カ月という短いインターバルでのリリースである。軽快でノリの良いPopを全編で繰り広げている。ClubやEDMを取り入れたアップな曲が多数で、それに哀愁感のあるミディアム~スローも取り混ぜている。3分前後の短めの曲が、どんどん切り替わっていくので、非常に小気味よい。ただ、全体的には同じような印象の曲が少なくいが、逆に統一感がとれてるとも言えるか。30台後半にして、この若々しさはさすが。
Black Panther The Album
[Black Panther / The Album] マーベル映画"Black Panther"にインスパイアされたKendrick Lamarが制作したアルバム。ただ、サントラは別にあって、このアルバムからも一部は映画に使われている。ほぼ全曲に関わっているKendrickの新作と言っても良いレベルで、Producer陣もお馴染みの面々だ。映画の舞台であるアフリカの音楽を大きくフィーチャーしているのが特長で、南アフリカのRapper, Singerを4人ゲストに迎えていて、ZuluでのRapも披露している。いつものKendrickのアルバムの雰囲気は薄目で、メローで大らかな曲が多く、バラエティに富んだ構成になっている。特にSZAとの②なんか素晴らしい。
Meshell Ndegeocello / Ventriloquiam
[Meshell Ndegeocello / Ventriloquism] Meshell Ndegeocelloの4年ぶりの作品にして、初のカヴァーアルバム。Bruno Marsの24K Magicをただのコピーだとして批判したMeshellが、Cover作とは面白い。しかし、こちらはオリジナルのイメージが残らない、全く印象の違った曲に作り替え、自分のものにしているのは流石の一言。独特の世界観を持つMeshellならではだ。4人編成のバンドによるTrackに、静謐で茫洋としたサウンドとCoolなVocalという組み合わせはいつも通り。1982年から1995年あたりのR&B作が元になるが、既に30年経過しているのに驚いてしまう。
Justin Timberlake / Man Of The Woods
[Justin Timberlake / Man Of The Woods] Justin Timberlakeのなんと5年ぶりのオリジナル作。今までの作品とは大分趣が違って、尖がったTrackは1曲ぐらい。代わりに聞きやすく、Popな曲がメインとなっている。特に後半になるに従い、穏やかでアーシーな雰囲気となり、最後は本人の二人の子供の声がはいった曲で締めくくっている。サウンド的には、R&B, Rockに加え、Countryっぽいアレンジもあり、わかりやすいメロディーがほとんど。ProduceはTimbalandの出番は控えめで、Neptunesの二人が半数以上を占め、いかにもなPopでノリの良い曲を提供している。
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