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Nicki Minaj / Pink Friday 2
[Nicki Minaj / Pink Friday 2] 2023年暮れにリリースされたNicki Minajの約5年ぶりのアルバム。タイトルにあるようにデビュー作の続編的な位置づけであり、本人も原点回帰と言っている。40歳を越え、貫禄もついてきてはいるが、まだまだ頑張っているという印象。Rapと唄は半々くらいで、⑦では可憐な歌声も聞かせてくれている。Trackは全体的にPopで判りやすい曲が多く、全体通して楽しめる。また、④⑧⑨では大ネタ使いでのサービスも忘れていない。今や一線級の女性MCがたくさんいるのが当たり前になったが、その走りとなったNickiの歴史的価値を改めて思い起こすことにもなる作品でもある。
Earl Sweatshirt & The Alchemist / Voir Dire
[Earl Sweatshirt & The Alchemist / Voir Dire] Earl SweatshirtがProducerのThe Alchemistと組んだコラボ作。前作の2曲でのProduceにて相性が良かったのか、今作では全曲制作を担当している。ソウルフルなTrackのうえで、気怠く、老練な感じのフローをEarlが展開しており、過去作品のような暗さは薄れていて、落ち着いた印象を受ける。ただ、Lyricは内省的で、過去を振り返ったものが多くなっている。Guestは少な目で、盟友Vince Staplesが2曲で参加している。
Raye / My 21st Century Blues
[Raye / My 21sr Century Blues] 南ロンドン出身でUK, Swiss, Gahnaをルーツに持つのSinger, Song Writer, Rayeがインディへ移籍後、⑤のTik-Tokでのバイラルヒットを経て、2023年春にリリースした2nd Album。2024のBrit Awardを総なめし、時の人になっている。タイトルにあるように、実質的1曲目の②では、Bluesっぽさを打ち出しているが、その後はダンスを基調に、エレクトロ, Pop, R&B, ハウスに実質的エンド曲での⑮ではGospelまで披露と、曲調は幅広く、これ自体で十分に楽しめる。これだけでなく、メジャーレーベルに属し、8年近くを過ごした音楽業界への不満や怒り、性的虐待、性的暴行、身体醜形障害、依存症、男尊女卑、さらには気候変動まで盛り込んだLyricも相俟って、大いなる注目を集めている。メジャーを離れ、伝えたいことを伝え切った解放感や逆境を経験した人の強さが感じられるアルバムである。
Metro Boomin / Heroes and Villans
[Metro Boomin / Heroes and Villans] 若くして、Trapシーンを代表するProducerにまで上り詰め、Hip-Hop全体でもトップグループに位置するMetro Boominの2022年末リリースのリーダーアルバムとしては2作目。当作でもProducer業の専念している。代わりにFuture, Travis Scott, A$ap Rocky, Don Triver, 21 Savageなど身近なArtistが入れ替わり立ち替わりで、Rapや唄を披露している。全体的には、スローで物悲しい感じのTrap曲が多くなっているが、1曲目では、John LegendがChorusとともにソウルフルな唄を聞かしてくれている。⑭もはいりがYeっぽくて面白い。
Tirzah / Trip9love...???
[Tirzah / Trip9love...???] Londonの北東に位置するEssex出身のシンガー, Tirzahの2年ぶりとなる3rdアルバム。2010年代前半から、音楽活動を始めた人で、前作に続き、当作でも高い評価を得ている。音楽専門学校からの相棒、Mica LeviのProduce、演奏によるTrackはスロー中心でダウナーでダーク。Pianoのループを基調としており、これTirzahの気怠く、抑え気味のVocalが相俟って、アブストラクトでエクスペリメンタルな印象も受ける。リヴァーヴのかかったGuiterが特徴的な曲も含めて、Totalでの一編の作品のような感じになっている。
Sexxy Red / Hood Hottest Princess
[Sexyy Red / Hood Hottest Princess] St. Louis出身、25歳のFemale Rapper, Sexyy Redの2作目となるMix Tape。St. Louis自体は中西部の主要都市だが、当作品は南部愛溢れる作品になっている。フリースタイルで作ったPound Town(2を当Mix Tapeに収録)が、Tik-Tokでバイラルヒットしたり、②も同じくTik-Tokで40万本以上の動画で使用されたりと、草の根的に人気を集め、2023年に当作品にてブレイクを果たした。制作には、Tay Keith, Juicy J, DJ Paulといったメンフィス勢も参加し、Lyricはビジュアルから想像つくように、男、金、Sexと、まさにちょっと前のBlingBlingなサザン・ヒップホップ作になっている。
Danny Broen / Quaranta
[Danny Brown / Quaranta] JPEGMAFIAとのコラボ作が好評だったDanny Brownのソロとしては、4年ぶり6作目。タイトルのQuarantaは、イタリア語で40のことと、冒頭でアナウンスされていて、また、Quarantine(検疫)ともかけているようだ。40歳になり、アル中とドラッグからのリカバリー、恋人との別れと新恋人との出会いといった濃い経験とコロナ禍が重なった大変な時期に制作されたとのことで、過去の作品に比べ、コミカルなところも無く、落ち着きのあるというか地味目な作品になっている。Trackも良くつくられてるものの抑え気味。そんな中、Alchemistによる②などはロックっぽく、勢いが感じられる。Lyricも自身の生い立ちや過去を振り返るようなものが多く、40歳になって、方向を変えつつあるのか、あるいは、一度立ち止まって見ただけなのか、次回作が気になるところだ。
Nas / Magic 3
[Nas / Magic 3] King's Deseaseシリーズと並行してリリースしてきたMagicシリーズの最終作にして3作目となるNasの16thアルバム。2021からの4年で6つ目のアルバムリリースであり、全てを今や盟友と言えそうなHit-BoyがProduceしている。ほぼ全曲、SamplingをベースにしたTrackにNasのストレートで力強いフローを組み合わせたベーシックなBoom Bap作品であるが、Sampling, フローとも非常に高いレベルでデリバーされており、アルバムとしての完成度も高い。LyricはHip-Hop50周年を意識してか、Hip-Hopや自身のRapper人生などを振り返ったものになっている。
Overmono / Good Lies
[Overmono / Good Lies] UKのRussel兄弟によるEletcric Duo、Overmonoの1stアルバム。2000年代よりTruss / Tesselaとしての活動してきた界隈では著名な人たちで、EPで期待をもりあげつつ、アルバムリリースに至っている。ガレージからの影響も見えるスピーディーなブレイクビートに、加工された女性Vocalという組み合わせが多く、もちろん深夜のダンスフロア向きのサウンドになっている。それだけでなく、メランコリックであったり、茫洋した雰囲気もあったりと幅をもたせたところもある。
Gunna / a Gift & a Curse
[Gunna / a Gift & a Curse] Georgia出身、30歳のRapper, Gunnaの1年ぶりのアリバム。2010年代中ごろから活動し、各年1枚リリースのペースをキープしている働き者で、Chartトップも獲得済みに中堅である。2022年に収監されたり、その際、密告者疑惑をかけられたりと、ざわついていたプライベートや周りへの不信感を複数曲でもろに反映している。作風はいわゆるTrapで、ゆったりとして哀愁感のあるTrackにGunnaの唄うようで活舌の良いフローがのっかっている。また、制作陣に著名なProducerの名はなく、ゲストも無しということで、自分言葉で語りたいという強い意志が感じられる。
Armand Hammer / We Buy Diabetic Test Strips
[Armand Hammer / We Buy Diabetic Test Strips] 前作はAlchemistとの共作だったHip-Hop Duo, Armand Hammerの2年ぶりのアルバム。前作ほ自分たちのレーベルだったが、今回メジャーなインディレーベルからのリリースとなる。当作では、JPEGMAFIAを始めとした多くのProducerがかかわっているが、不穏でExperimentalの作風は、そのままである。ただ、基本となるTrackがバンド構成によって作られてるところに変化があり、これに環境音やノイズを加えたサウンドコラージュが聴きどころとなっている。
André 3000 / New Blue Sun
[André 3000 / New Blue Sun] 最近、あまり耳にする機会のなかったAndré 3000のソロ作。ソロとしては、Class of 3000という幼児向けアルバム以来となりそう。ただ、これまでの音楽活動の中心であったHip-Hop色は皆無で、アンビエントでニューエイジ作品となっている。昨2023年に、André 3000をゲスト参加し、アルバムをリリースしたCarlos Niñoとの二人三脚によって制作されている。唄も一切なく、インストロメンタルのみで、André もアルバムジャケットにあるようにフルートっぽいWind Controller / Sinthesizerを演奏している。サウンドは幻想的で、スピリチュアル。ユートピアっぽいものを表現しているような印象を受ける。
PinkPantheress / Heaven Knows
[PinkPantheress / Heaven Knows] PinkPantheressの1st Album。話題となった前作がEPだったので、アルバムデビューとなる。drum'n'bassを中心としたUKクラブミュージックにPopなメロディと彼女の可愛らしく甘いVocalとの組み合わせは、前作を、さらに洗練させた感もあり、一種の完成型となった印象を受ける。本人がSong WritingやProduceも行っているが、今回はMixingやMasteringは専門家に任せていることも一因かもしれない。他にはMura MasaがProducerとAdditional Producerで全曲に参加し、統一感を出している。軽快なPopから、しっとりとしたスローまで、曲調は様々で、シングルヒットしたIce Spiceとの⑬、Kelelaとの相性も良く、浮遊感のある⑥、ラテンギターが入ってお洒落な③など聴きどころも多い。
Brent Faiyaz / Larger Than Life
[Brent Faiyaz / Larger Than Life] Brent Faiyazの1年ぶりとなる作品はMix Tapeでのリリースとなった。ネオソウル寄りのスロー作品がメインとなるが、2000年前後へのオマージュがたっぷりで、MissiyやTimbalandまでもがGuest参加していおり、サンプリングにも使われたりしている。他にもCoco Jonesや、A$AP RockyをはじめとするRapper陣も加わり、平坦になりがちなスロー集に良い味付けとなっている。Brentの唄は、アンニョイで甘く、曲調に溶け込んでいる。ちなみに2024/1/24のライブに参戦したが、オーディエンスは若い女子ばかりで、嬌声をあげてました。
Jorja Smith / Falling Or Flying
[Jorja Smith / Falling Or Flying] 前作が8曲入りEPだったので、アルバムとしては5年ぶりとなるJorJa Smithの2作目。冒頭、ビートを前面に押し出したトライバルな曲があったり、レゲエを取り入れた曲が続いたりと、過去の作品に比べると、音楽の幅が大分、広がっている。ただ、後半にかけては、今までの路線を継承したゆったりとしたR&Bやギターをフィーチャーした曲が多くなっている。また、全体的にはハウスに近づいている気もする。Guestは少な目で、J HusがRapだけなく、唄を披露しているのがちょっとしたサプライズ。制作を、女性Duoの無名に近いDAMEDAME*がメインであるが、能力は十分で、今後が期待できそう。Jorjaのの憂いを帯びた唄は、表現力が増してるし、ときどきAliciaっぽいところも感じられる。あと、パッケージとしてのCDが、厚めのブックレット含めて、出来が良いです。
Doja Cat / Scarlet
[Doja Cat / Scarlet] 近年、勢いを増す女性Rapper陣の中核をなすDoja Catの2年ぶりの3rdアルバム。前作はPopな方向に振った感じではあったが、今作は初心に戻ったのか、Hip-Hop色を少し強めている。ただ、中盤以降ではコンテンポラリーなR&B曲も続き、トータルでは、今どきのHip-Hop Soulとして象徴的な作品になっている。また、主な制作陣は、Earl On The Beat, Kurtis McKenzieあたりと、そこまでメジャーな人たちではなく、ゲストも無しと自身のアーティストパワーに相当、自身がありそうだ。TrackはTrap色が強く、とんがった曲も多くて、力がこもったものになってる。Doja Catも攻撃的でストレートなRap, 唄うようなRap, しっとりした歌唱と、曲に応じて、様々な面を魅せている。
Lil Uzi Vert / Pink Tape
[Lil Uzi Vert / Pink Tape] Lil Uzi Vertの3年ぶり3作目。Vonus Track扱いの3曲を含む26曲87分弱の、前作を凌ぐ大作であり、そのうち18曲をBillboard Hot100に送り込んでいる。制作は前作同様、Brandon Finessinが中心となり、Bugz Roninあたりが存在感を示している。Trackはダークで音圧高め。今までの方向性は変わってないが、特に後半、ハード目のRpckっぽい曲が続いたり、エレクトロな曲やホラーな感じの曲もあったりと様々。世界的プロレスラー中邑真輔の以前の入場曲をサンプリングした、その名も"Nakamura"という曲や、Babymetalをフィーチャーした⑬(Babymetalを手がけるKOBAMETALが制作)があったり、㉖で原宿での出来事を唄っていたりと、日本のサブカル好きは変わらないようだ。哀愁感のあるTrackに唄うようなRapという組み合わせも引き続き。ちなみにアルバムジャケットはOutkastのStankomiaの黒いストライプをピンクに替えたものだ。
Sampha / Lahai
[Sampha / Lahai] Samphaの約6年半ぶりの2ndアルバム。デビュー作で成功したにも拘わらず、この間、コロナなどもあって、音楽活動はスローダウンしてたとのことで、勿体ない気もするが、良質な作品で戻ってきてくれた。タイトルはシェラレオネの祖父の名前であり、自身のミドルネームでもあるとのことだが、特にルーツ志向が強いわけでもなさそうだ。静謐で抑え気味のゆったりとしたエレクトリックソウルをベースに、UK Grage, Jungleが加わり、Jazz, Hip-Hop, 西アフリカの音楽などもとりいれた独特のサウンドが展開されている。Produceではスペイン人のEl Guinchoのサポートを得て、Guest陣もLéa Sen, Sheila Maurice-Grey, Yaeji, Morgan Simpson, Ibeyiと多彩でグローバルではあるが、Samphaの作る音楽にパーツ的に組み込まれている感じだ。また、ところどころSpoken Wordや荘厳なコーラスが使われてたりして、Lyricを含め、トータルとしてSpritualな印象を受ける作品だ。
Jamila Woods / Water Made Us
[Jamila Woods / Water Made Us] Jamila Woodsの4年振り2作目。引き続き、穏やかでオーガニックなソウルアルバムに仕上がっている。スポークンワードや、モノローグが多用されてたり、Popで軽快な曲も数曲あったり、フォーキーな曲もあったりとバラエティには富んでいるが、全体は揺蕩うような優しいトーンで統一されている。Guestは少なめだが、SabaやPeter Cottontaleなど地元勢のサポートを得ている。Vocalも引き続き、柔らかい声が温かみのあるもので、Lyricはよりパーソナルなものになっているが、暗さは感じられない。タイトルにあるように海に包まれているような印象の作品である。
Killer Mike / Michael
[Killer Mike /Michael] Killer Mikeのなんと、11年ぶりのアルバム。近年はRun The Jewelsや、アクティヴィストとしての活動で、もの言うRapperの第一人者的存在になっているが、ソロ作としては久々のリリースとなる。サンプリングを多用したTrackは硬派で、ストレート。Gospel, Funk, Soul, Bluesといった南部サウンドを総結集したようなTrackは、どれもかなりのクオリティになっており、Cee-Lo, André 3000, FutureといったDungeon Family勢などATL中心にメジャーなGuestを迎えて、高揚感のあるスケールの大きな作品になっている。Killer MikeのRapは、相変わらず力強く、本人のこれまでの半生を振り返っている。
Summer Walker / Clear: The Series
[Summer Walker / Clear: The Series] Summer Walkerの2019年リリースのEP、Clearに、Clear 2として9曲足して1枚にした作品。その間は4年とインターバルは空いてるが、統一感は保ててると思う。ジャケットには妊娠中の自分の姿を載せているが、その父親のLVRD Pharohとは既に破局してたりと、穏やかでないが、そんなプライベートを鎮めるように、穏やかで静謐な曲が多い。特に前半のClearの部はJazzyでアコースティックなTrackで占められている。Clear 2の部でも、引き続き、音数は少なく、スローでメロディアスな曲が続いている。今回、Guestも少なめだが、Summer Walkerの表現力豊かでしっとりした唄さえあれば、不要だと思う。
Drake / For All The Dogs
[Drake / For All The Dogs] Drakeの1年ぶり作品で、スタジオアルバムとしては8作目。前作はハウスだったが、当作では既定路線に戻り、23曲、84分という大作となっている。ただ、全体としてのコンセプトがあるわけではないので、すこしづつ聴くのも良いと思う。声が地味目で、フローもアンニョイで抑揚がない人だが、各曲ともそんな第一印象と違って、Trackはかなりポップ。盟友Noah "40" Shebibの出番は控えめで、様々なProducerを起用しており、Bad Bannyを迎えたラテン曲⑲などバラエティにも富んでいるし、聴きどころも多い。Guest陣も様々だが元カノSZAが⑨⑳で、きっちりとした仕事をしている。Lyricは失恋物が多く、この辺は変わりようがないのかもしれない。
Jon Batiste / World Music Radio
[Jon Batiste / World Music Radio] 映画"Soul"のサントラとGrammy3部門受賞の前作で、一躍、Popular Music Fieldでも名声を得たJon Batisteの2年ぶりの作品。66th Grammyでは6部門にノミネートされている。Janelle Monaeの新作は汎アフリカを目指したものだったが、こちらはアリバムタイトルが示すように、より広い世界をカバーしようとする意気込みが感じられる。Jazz, Soul, Blues, Funkに軸足を置きつつ、Country、African, Raggae, K-PopやMichael Jacsonっぽい曲など様々。これらを、これもタイトルにあるようにRadio DJが繋ぐような構成としている。Guest陣もNewJeans, Kenny Gなど、そんなアルバムの特徴に沿った人たちが呼ばれている。2023年9月に来日したときのライブにも行ったが、本当に多彩で芸達者でピュアな印象を受けた。また、個人的にはStevie WonderやK'naanあたりと近いものを感じたりもしている。
Travis Scott / UTOPIA
[Travis Scott / UTOPIA] 自身主催のフェスで死亡事故を起こし、当時の対応も良くなかったこともあって、ここ3年、活動が自粛気味になることを余儀なくされたTravis Scottの5年ぶりとなる4th Album。満を持してのリリースであり、中身も濃い大作となっている。デビュー時からKanye Westとの類似性は認識されていて、前作では路線変更の傾向も見られたが、当作では元に戻り、さらにはKanye のYeezusへの参照性が強くみられる。ただ、Kanyeで耳が馴らされたせいか、あまりリスナーを突き放した感覚はない。全体的に、不穏で仰々しい雰囲気に覆われているが、個々のトラックのクオリティは高く、多彩であり、また、そのKanyeも含めて、制作陣やGuestもかなり豪華なので、聴きごたえは十分すぎるほど。音楽シーンでのKanyeの不在感は完全に埋めてると思う。
Janelle Monáe / The Age Of Pleasure
[Janelle Monáe / The Age Of Pleasure] 前作あたりで女性R&B Vocalの実力トップに上り詰めた感もあるJanelle Monáeの5年ぶり4作目。当作も、クオリティの高さを見せているが、長めにインターバルをとっていることが、好影響になってると思う。制作は引き続き、Nate "Rocket" Wonder,が中心となり、相性の良さが良くわかるが、アルバムの全体感はガラッと変わっていて、レゲエ/ダンスホールやアフリカ的なリズムの曲が大半を占めており、純粋なR&B曲は無い。そのぶん、アーシーで、US以外の世界まで取り込んでいく意欲が感じられ、それはSean Kutiをはじめとするゲスト陣のセレクションにも現れている。リズミカルでノリの良いが多数であり、快楽的なLyricも相俟って、コンセプト的には、一味違うパーティーアルバムを目指しているようだ。
Cleo Sol / Heaven
[Cleo Sol / Heaven] Cleo Solの2年ぶり3作目。ただ、この直後に4作目の"Gold"もリリースされている。前作より、引き続き、全曲、Infloが制作を担当し、Acoustic楽器中心の静謐で穏やかな曲ばかりで、ゆったりとした温かみのある印象を受ける。Neo-Soulというよりも、よりプリミティブが70年代のシンガーソングライターっぽい、印象が強い。Vocalも、柔らかく抑えが効いたもので、包み込むような感じで癒しを与えてくれるもので、秋の夜にちょうど良さそうだ。
Dinner Party / Enigmatic Society
[Dinner Party / Enigmatic Society] Terrace Martin, Robert Glasper, Kamasi Washington, 9th Wonderの4人によるユニット、Dinner Partyの3年ぶりのアルバム。正式にユニット名をDinner Partyにしたようだ。引き続き、9曲24分強という短めの作品で、全体感としては、大分Neo-Soul寄りになってる。その分、豪華Jazz Musician3人の主張は抑え気味でちょっと勿体ない気もする。④⑦のみInstrumental曲で、残り7曲は全て男性のVocal Guestを迎えており、そのせいか、あまり華やかさみたいなものは無いが、緩やかな印象の曲も多い。制作はTerrace Martin主導であり、彼の好みが反映されているのかもしれない。
Victoria Monét / Jaguar II
[Victoria Monét / Jaguar II] EPだった前作の続編となるVictoria Monétの今回はフルアルバム。メジャーからのデビューアルバムでもある。引き続きメインでのProduceはD'Mileが担当し、70年代っぽいところも残す現代的で手堅いR&B作に仕上がっている。Trackの構成はアップ~ミディアム~スローとバランス良く、穏やかで懐かしい感じの曲も多いので、とても聴き易い。唄は抑え気味で、声がやわらかく透明感があるので、一層、心地よく感じる。Guestのほうは、お馴染みLucky Dayeとの相性の良さもさることながら、Buju BantonやなんとEW&Fと意外なところからの参加も面白い。
Young Fathers / Heavy Heavy
[Young Fathers / Heacy Heavy] Young Fathersの約5年振りとなる4作目。周りとの交流が少なく、一種独特な作風を保ってきたチームだが、そこは引き続き、維持されている。ただ、Hip-Hop, Grime色は少し薄れて、メンバー2人の出自であるAfrica音楽からの影響が色濃くなっている。これにパンクやインダストリアルっぽいロックなど様々なジャンルが加わったようなサウンドに、3人によるVocal, Chorusが加わって、まさに彼らならではのアルバムとなっている。制作もメンバー中心で、ちょっとローファイなところもあるが、アップで高揚感の感じられる曲も多い。
Noname / Sundial
[Noname / Sundial] 前作はセルフリリースだったが、今度はレーベルからのリリースとなるNonameの2作目。サウンドは、バンドによるJazz色が一層強く基調となっている。加えて、Latin, Neo Soul, Trap, Funkなども塗されており、Gospelっぽいコーラスも2曲ほど。参加制作陣多数ではある、統一感は保たれていて、全体的な印象はスムースでムーディーなものとなっている。これにNonameの穏やかに諭すようなSpoken WordっぽいRapや唄がのっかるところは、今まで通り。ただ、そんなTrackの半面、Lyricは社会性を帯びた物が多いのが特徴的。同郷のSaba, Commonなどのサポートもあり、また、Jay Electronicaによる落ち着いたRapとの相性も良い。
Yazmin Lacey / Voice Notes
[Yazmin Lacey / Voice Notes] UK中部の出身でLondonで活動するSinger, Song Writer、Yazmin Laceyの初フルアルバム。Gilles Petersonにフックアップされ、Jorja Smith, Jordan Rakei, Alpha Mistなど若手アーティストとのコラボや、3枚のEPリリースを経て、アルバムデビューに至っている。33歳と決して若くはないが、当作を聴くと、既に自身のスタイルを得ていることが判る。全体の印象としては、穏やかなネオソウルで、UKのProducerによるスローなTrackにJazz, Raggae, Bosaなどが入り交じり、ゆったりと落ち着いた空気が流れる。Erykah Baduから毒気を取り除いた感じでもある。Yaminの声は柔らかく、語りかけるような唄がサウンドに溶け込んでいる。
El Michles Affiar & Black Thought / Glorious Game
[El Michles Affiar & Black Thought / Glorious Game] ファンク系の2人インスト・ユニット、El Michels Affiairとご存じThe Roots所属のRapper, Black Thoughtのコラボ作。Black Thoughtにとっては昨年のDanger Mouseに続く共作である。前者の中心人物であるLeon MichelsがメインでProduceしている。Wu-Tangとのコラボ諸作で慣らしたのか、TrackはストレートなHip-Hopを、バンドで再現しており、、Black Thoughtもやりやすかったのか、うまく馴染んでいて、一体感がつたわってくる。特に⑤〰⑧あたりのファンクでメローな曲が気持ち良く聴ける。
Everything But The Girl / Fuse
[Everything But The Girl / Fuse] UKのPop, Duo, Everything But The Girlのなんと24年ぶりのアルバム。1982年に結成し、1999年のアルバムリリースが最後となっていたが、私生活でもパートナーである二人にとっての3人の子育てが終わったのか、本当に久々の新作リリースとなった。全体的にはエレクトリックなサウンドによるソウル作品であり、曲調はメランコリックで、ゆったりと落ち着いたものが多く、抑え気味のVocalとも相俟って、心の奥底に染みてくる。また、ときにはハウスっぽさも感じられる。音響的な統一感にも、だいぶ、こだわって作られていることも感じられる。去年、還暦を迎えた二人ではあるが、成熟を感じつつも、若々しさもあって、これからも、まだまだ活躍してくれそうだ。
Meshell Ndegeocello / The Omnichord Real Book
[Meshell Ndegeocello / The Omnichord Real Book!] Meshell Ndegeocelloの5年ぶりのアルバムはBluenoteに移籍後、第一弾となる。ジャンルレスな音楽を提供しながら、近年ではJazz寄りが多かったので、良い流れと言えそうだ。当作品でもJazzとR&Bに軸足を置きつつ、アフロ的な要素を散りばめ、一部ではテクノも加わった作風に仕上がっている。インストを全面に押し出した曲もあるが、多くでは男女のVocalもフィーチャーされている。実験的であったり、ダンサブルな曲もあるが、全体感としては知的で落ち着いた印象を受ける。ちなみにタイトルにあるOminichordは1981年に日本の鈴木楽器製作所が作った電子楽器(なんと今年、復刻予定)であり、①②⑤でMeshellが奏でている。
Jessie Ware / That! Feels Good!
[Jessie Ware / That! Feels Good!] Jessie Wareの3年ぶりとなる5作目。前作でDance/Pop方面に大きく舵をきったが、そちらの路線を突き詰めて、ほぼディスコと言ってよさそう。ダンサブルでノリの良いTrackが続き、アラファーにして、一層、若々しく、明るくなっている。Produceは前作から引き続きのJames Fordに加え、古くはMadonna, 最近ではRina Sawayama, Dua Lipaなどとも組んでいるStuart Priceが4曲を担当していおり、サウンドはStringsを多用し、あくまでもゴージャスで煌びやか、LyricもPositiveなものが多そうだ。Jessieの唄は、以前に比べ、はっきりと強めに声を張っており、特に高音の伸びが素晴らしい。
Gabriels / Angles & Queens
[The Gabriels / Angels & Queens] LAをベースに活躍するTrio, Gabrielsの1stアルバム。2022年に先行リリースしていたEP(2022年 47位)7曲を含んだフルアルバムということになる。メンバー構成はJacob LuskがVoで、Ari BalouzianとRyan Hopeが制作や楽器を担当している。 当作では加えてKendrick Lamarの諸作で知られるSounwaveがProducerとして参加しているが、Hip-Hop色は全くなく、上質なVintage Soulに仕上がっている。サウンド的には、Gospel, Doo Wop、JazzにSoulを加えた温かみのあるもので、Mid〰Slowがほとんど。Stringsをアクセントに使っているのも特徴的だ。また、⑦では追憶の主題歌(The Way We Were)を途中に挟んでいる。Jacob Luskの唄は高音でファルセットを多用しており、美しく儚い。
Little Simz / No Thank You
[Little SImz / No Thank You] 2022年末に突如リリースされたLittle Simzの1年強ぶりの5thアルバム。今回も全曲ProduceしているInfloのレーベルに移籍してのリリースとなる。スケールアップした前作では、多くのメディアで年間ベストの評価を得たわけだが、今回は少し、基本にたち帰った感がある。楽器を多様してるところから、そんな印象を得たのかもしれないが、なんと、Chris Daveが半数の5曲でDrumを叩いていて、ライブ感を高めている。Infloのことなので、それだけではなく、ストリングスも多用し、荘厳な曲や、アフリカンでパーカッシブな曲も合ったり、曲調が曲の途中で変わったりと、Trackはかなりの完成度で面白く、飽きさせない。また、おなじみCleo Solが6曲で、コーラスや唄を聴かせており、彩りを添えている。中低音メインのLittle SimzのRapは、引き続き、力強く、Lyricなどからも怒りが見て取れる。
Amaarae / Fountain Baby
[Amaarae / Fountain Baby] Ghana系でNY出身のSinger, Amaaraeの2ndアルバム。矛盾のある表現かもしらないが、都会的なアフロ・ポップという感じで、ただ⑩などは全くそれっぽくはなくて、l後半はオルタナロックだし、R&Bや時折Latin, Jazz色も加わった曲もあって、曲調は幅広く、じっくり聴くべき曲も多い。メロディアスに聴かせる曲もあり、Lyricでは、全編、恋愛関係を唄っている。既に29歳ということだが、ころころと可愛らしい声と、こういったTrackとの結構斬新だと思う。⑦では、うっすらと日本語のSEが聞こえ、ラストでは"こんな曲、どうでもいいんですけど"と言ってるように聞こえる。
Daniel Caesar / Never Enough
[Daniel Caesar / Never Enough] Daniel Caesarの4年ぶりとなる3rdアルバム。1作目に比べ2作目はあまり話題にならなかったが、当3作目は十分なクオリティを持つアルバムに仕上がっている。R&B色は大分後退し、スローな美メロを中心に据えた、フォーキーで落ち着いたロックといった感じのTrackが多い。ビートルズっぽさも薄ーく感じられる。これに、Danielの繊細なVocalが加わって、しみじみとした印象を与えてくれる。Guestに同郷のMustafaやserpentwithfeet、曲作りにはRaphael SaadiqやMark Ronsonも一部で加わり、的を得すぎた陣容となっている。それにしてもメロディメーカーとしてのDanielの才能は抜群で、それだけで評価に値する作品だと思う。
Ice Spice / Like..?
[Ice Spice / Like..?] Bronx育ちのRapper, Ice Spice(23歳)の7曲入りEP。13分強という短めの作品である。Rapを始めたのは2年前とのことで、⑦がDrakeに認められて、Virul Hitして、2023年の最も勢いのある新人Rapperの1人となり、映画Barbieのサントラにも参加している。軸としていたNY Drillは通過したと本人も言っているが、当作ではJersey Clubも取り入れるなど、音楽性を広げており、その先にはメインストリームを目指しているそうで、この辺は、大学時代からの仲間であるRITUOSAとの二人三脚での試みと言えそうだ。Rapのほうは、中低音中心で、ほんの少し掠れ気味。勢いで押すタイプではないところがかえってユニークだ。
Sampa The Great / As Above, So Below
[Sampa The Great / As Above, So Below] Zambia出身で、Australiaで活動するSinger / Rapper / Song Writer, Sampa The Greatの3年ぶりとなる2ndアルバム。既に29歳ということで、作品の充実度は高く、貫禄も感じさせる。サウンドは、全体を通して、AfricanとNeo Soul, Hip-Hopをミックスしたユニークなもので、曲によって、これらの要素のバランスが変えているので、トーンは変わらずとも、バラエティに富んでいて飽きさせない。リズムはトライバルなものが多く、一部ではロックっぽさも加えたり、メローで温まる⑨などもあって、一層の面白さを感じさせる。Sampaも曲調によって、唄い方も変えたり、Rapにスイッチしたりと、高いスキルを披露している。Guestも様々だが、Denzal CurryのRapが力強くて印象に残った。
KAYTRAMINÉ /KAYTRAMINÉ
[KAYTRAMINÉ / KAYTRAMINÉ] ProducerのKaytranadaとRapperのAminéによるDuo作。Malibuのビーチハウスを借りて、制作したとのことで、サマー・パーティ向けのリラックスしたアルバムに仕上がっている。サウンドのほうはあくまでも軽快で、時には気怠く、BPMゆったり目の曲が多い。Aminéの抑揚少な目で、淀みなく語りかけるようなRapとマッチしている。GuestはRapperの大物4人に加え、Amaaraeが可愛らしい声で清涼感を与えてくれている。
Kali Uchis / Red Moon in Venus
[Kali Uchis / Red Moon in Venus] Kali Uchisの3年ぶり3作目。前作はスペイン語によるものだったが、今回はほぼ英語へと戻している。Trackは、ミドル〰スローなR&Bであり、ゆったりとした甘く気怠く、センシャルな曲が続く。もろにLatin志向な曲は無いが、ところどころLatinの空気感を感じさせる曲が多い。Guest陣は、男性Vo2人と女性Vo1人と抑えめで、Summer Walkerも華を添える程度。その分、まだまだ若々しいKali UchisのVocalがフィーチャーされており、特に高音が可愛らしい。最後は趣向を変えて、Sounwaveらによる、Popで軽快な⑮で締めくくられている。
Billy Woods and Kenny Segal / Maps
[Billy Woods and Kenny Segal / Maps] 通好みながら、近年の活躍が目覚ましいBilly Woodsが4年ぶりにKenny Segalと組んだアルバム。Billy Woodsの作品にしては、大分、聴き易く、Criticの評価も高い。Song WritingはBilly Woods、ProduceはKenny Segalという役割分担となっており。また、Guestでは、Armand Hammerのもう一人、ELUCIDやAesop Rockなどが参加している。全体をややダークなトーンで統一しつつ、MoodyでJazz要素強めのTrackは都会的であり、この上で、Billy Woodsがストーリーテラーぶりを発揮している。
6lack / Since I Have A Lover
[6lack / Since I Have A Lover] Boltimore生まれで、その後、ATLで移り育った30歳のR&Bシンガー / Rapper、6lackの3rd Album。Spillage Villageのメンバーとしても知られ、最近では客演でも良く目にすることも多い。そんなSpillage Villageの作風とは全く違って、アンニョイで静かなTrackが多い。茫洋で穏やかで、かといってそこまで暗くなく、部分的には爽やかな印象を受ける。スローがほとんどとなるTrack上で、語りかけるような唄と、たまに唄うようなフローが溶け合っている感じだ。中でも、Stingの曲を引用した⑩が耳に残る。なお、制作陣としては、Londonで活動する若手ProducerがFwdslxshがメインとなっている。ただ、同じようなトーンの曲が続くので、19曲は多すぎだと思う。
JPEGMAFIA x Danny Brown / Scaring The Hoes
[JPEGMAFIA x Danny Brown / Scaring The Hoes] JPEGMAFIAとDanny Brownという、曲者2人による共作。Danny Brownの前作にJPEGMAFIAもゲストとして呼ばれているが、そのへんのつながりからフルアルバム作成にいたったのかもしれない。全曲、ProduceはJPEGMAFIAのみ、MCはRedveilが客演している1曲を覗いて両人のみというシンプルなCreditになっている。全体の印象は、かなり刺激的で強烈なもので、サンプリング含め、Jazz, Funk, Hip-Hop,ゲーム音楽など様々な要素が、コラージュ敵意入れ替わり立ち替わり現れ、音圧高めの曲も多くて、単純に面白く、JPEGMAFIAの才能が爆発している感じである。(しかも全てのビートをThe SP 404というコンパクトサンプラーで作成したとのこと)。Experimentalではあるが、聴きにくい感じでも無いので、普通に楽しめると思う。また、マルハニチロやファミコンのCMからのサンプリングや、坂本真綾の"約束はいらない"をループに使った曲など、このへんはJPEGMAFIAに日本在住経験が活かされているのであろう。
Chlöe / In Pieces
[Chlöe / In Pieces] 1st album、2nd albumとも高評価を得ている姉妹Duo, Chloe x Halleの姉のほう、Chlöeのソロデビュー作。彼女たちをHook UpしたBeyonceのLabelからのリリースである。1,2曲目はクラシックなソウルで始まるが、3曲目以降、今どきのトレンドを押さえたHip-Hop Soulに転じていく。また、後半にかけて、Chris BrownとのDuoや、Rapper(MissyとFuture)をゲストに迎えた曲などで変化をつけているが、どれも的を得た起用となっている。まだ、24歳のChlöeではあるが、唄には年相応以上の落ち着きが感じられ、特にスロー曲での中音域の表現力は見事。ソロデビュー作としては十分、成功と言えそうだ。
Kelela / Raven
[Kelela / Raven] Kelelaのなんと6年ぶりとなるオリジナル2作目。アンビエントで静謐なサウンドは継承しつつ、エレクトリックでハウス色を強め、時にダンサブルで、メロディアスだったりするのが特徴的な作品となっている。ドイツにわたり、 LSDXOXO, Yo Van Lenz, Florian TM Zeisigといった彼の地のProducerと制作したとのことで、ミニマルなサウンドは独特のものがあり、Kelelaの揺蕩うような透明感のあるVocalと一体化している。本人は、”社会の中で制度的に抑圧されてきた黒人女性の脆弱性が力に転じたことを象徴するサウンド”と語っているが、鬱屈や苛立ちは感じられず、あくまでも安らかで心が洗われる作品になっている。
Vedo / Mood Swings
[Vedo / Mood Swings] ミシガン出身のR&Bシンガー, Vedoの6作目。2015年あたりから本格的活動を始め、今年でちょうど30歳ということで、経験的には中堅の域に達している人のようだ。20歳のころに出演したオーディション番組でUsherに気に入られ、今でもメンター的な存在とのころ。そんなUsherの後を継ぐような、少し青臭さも残る、やや細めで甘いVocalが特徴である。サウンドは、90年代当たりの、今となってはクラシカルな感じであり、スローでロマンチックな曲が多い構成になっている。多くのProducerが制作にあたっているが、有名どころではTroy Taylorが2曲に参加している。ゲストでは同系のChris Brownに、最近客演の多いTinkが可愛らしい声を聞かせてくれている。
Musiq Soulchild & Hit-Boy / Victims & Villans
[Musiq Soulchild & Hit-Boy / Victims & Villans] Musiq Soulchildとしては、6年ぶりとなるアルバム。全曲ProduceしているHit-Boyとの共作となる。Hip-BopやHip-HopよりのR&B曲の制作を主戦場とすると勝手に思っていたHit-Boyではあるが、意外と、Hip-Hop色は抑え気味。逆にMusiq側に寄せたつくりになっており、ゆったりとして、温かで懐かしい感じのする曲が続いている。Musiqの唄もTrackに合わせたように穏やかであり、トータルとして耳馴染みの良いアルバムになっている。次回があるなら、もう少し刺激が有ってもよいと思う。
Lil Yachty / Let's Start Here
[Lil Yachty / Let's Start Here] Lil Yachtyの3年ぶりとなるアルバム。予告通り、Hip-Hop的要素ほぼ無しの、サイケデリック・ロック, エレクトリック・ポップ志向の作品となっている。気まぐれに作った感は全く無く、本格的なものであり、各曲のクオリティは高いし、メロディもしっかりとロック、ポップなものになっている。制作面でもPatrick WimberlyなどRock/PopのProducerの力を借りている。全体のトーンはメランコリックで茫洋としたものになるが、Pop寄りの曲では最近のWeeknd作品に近いものを感じる。一作だけの方向転換なのか、継続なのかは判らないが、こっち方面での今後の展開にも期待したい。
Liv.E / Girl In The Half Pearl
[Liv.E / Girl In The Half Pearl] Dallas出身で、今はLAを拠点とするR&B Singer, Song WriteであるLiv.Eの2ndアルバム。2010年代後半から活動してきて、まだ知る人ぞ知るって感じだが、当作でブレイクを果たす可能性大である。前作ではErykah Baduらから影響受けたネオソウル志向だったようだが、今回はExperimentalな方向にかなり振り切っている。ソウルにどうにしか片足残しつつも、テクノ, ハウス色の強い曲が多く、ドラムンベースやWeather Reportっぽい⑭など、曲調は様々。普通にメロディアスなスローやほぼVocalが入らない曲も数曲あり、試したいことを出し切ったということなのだろう。Vocalは⑦のようにシャウトする曲は稀で、ほぼ囁くような唄い方に徹している。
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