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Big K.R.I.T. / 4eva Is A Mighty Long Time
[Big K.R.I.T. / 4eva Is A Mighty Long Time] Def JamからBMGに移籍したBig K.R.I.T.の3年ぶりのメジャー3作目(2017年冬のリリース)。2枚組の大作であり、1枚目は"Big K.R.I.T."パートでAritstとしての自分を表現し、2枚目は本名の"Justin Scott"パートで、生身の自分を表現している。全編通して、ソウルフルでファンクでメローでブルージーなのだが、1枚目はRapの比重が多く、Trapっぽい曲もある。2枚目は逆に唄の比重が大きく、2-10のようなジャジーな曲もある。尖がったところはないが、黒人音楽の様々な要素をぎゅっと圧縮したような作品で、聴きどころ多数なので2枚聴くとお腹いっぱいという感じになる。
Drake / More Life
[Drake / More Life] お馴染みDrakeの1年振りの作品。本人はAlbumとMixtapeの間に位置するPlaylistと表現しており、22曲81分と、今までになくバラエティに富んだ作品になっている。特に前半はPopで聴きやすい曲も多数。GrimeよりSkepta、GiggsやNana RoguesみたいなUKのProducerが加わったり、NigeriaのDJ, Black CoffeeやMoodymann、Hiatus Kaiyoteを引用したりと、おいしいところを取り入れている。その代わりに盟友Noah "40" Shebib参加曲は減っている。後半になると、Drakeらしいアンビエントで茫洋としてダウナーのものが増えてくるが、前作から引き続きのダンスホールっぽい曲も。また、RapはGuestに任せ、本人はいよいよほぼ唄のみになってしまった。Playlistとはいえ、流しっぱなしにしては勿体ない作品である。
Daniel Caesar / Freudian
[Daniel Caesar / Freudian] CanadaはTronto出身の23歳、Daniel Caesarのデビューアルバム。アコースティックバンドによるミディアム~スロー中心の構成で、Neo Soulや90年代のOrganic Soulに茫洋感を加えたサウンドが心地よく、リラックスして聴ける。さらにはアンニョイで内省的な部分も。ゆったりとしたTrackに、ファルセット多めのDanielの唄という建付けも良いが、4人の個性的な女性Vocal Guestとの絡みが素晴らしい。Canada出身で以前からのコンビのMatthew BurnettとJordan EvansによるProduceも安定感を紡ぎだしている。ちなみにタイトルのFreudianとはフロイト派のことだそうだ。
Future / HNDRXX
[Future / HNDRXX] 2017年2月に2週連続で配信アルバムをリリースしたFutureのこれは2週目のほう。2作品で連続1位を獲得していて、これは史上初らしい。今までのようなサウスっぽさはあまりなく、Popで聴きやすい作品になっている。アンビエントなスロー曲は確かに多いが、本人が唄っている曲もほとんどで、明るい曲やメローな曲など含め、全体感として大分R&B寄りで、いつになくバラエティに富んでいる。また、本人がパーソナルな作品といっているように、Lyricは内省的なものが多い。
Jessie Ware / Glasshouse
[Jessie Ware / Glasshouse] UKの歌姫Jessie Wareの3年ぶりとなる3作目。前作以降、幼馴染(⑪のタイトルとなっているSamさん)との結婚、出産と私生活での順調さを持ち込んだような穏やかで落ち着いた作品である。曲もスロー中心で包み込むようで揺蕩うような暖かさを感じさせるものが多く、今まで以上に普遍的なVocalアルバムに仕上がっている。Jessieのささやくようなシーツ声の艶も増して、美メロとの相性も良く、耳に心地よい。Ed Sheeran参加の⑪なんか、ほんと、沁みてくる。
Loyle Carner / Yesterday's Gone
South London出身、21歳のMC, Loyle Carnerのデビュー作。ゆったりとした暖かい印象のビートに、つぶやくような、やけに落ち着いたRapや沁みる唄との組み合わせという全体感で、TrackはJazz, Gospel, Fork, Soulなどの要素が混ざっている。アコースティックなバンドにHornや効果的なサンプリンをとりいれ、クールだが人肌感覚のサウンドが心地よい。ADHDと難読症という病を持つことを公言しているようで、Lyricのほうも家族を身近な話題をテーマにしたものが多く、他に類をみないタイプのArtistと言えそうだ。
Lil Uzi Vert / Luv Is Rage 2
[Lil Uzi Vert / Luv Is Rgge 2] フィリー出身のRapper, Lil Uzi Vertの初フィジカル作。チャート1位を獲得し、GrammyのBest New Artistにもノミネートされ、ブレイクを果たしている。もともとはMix Tapeでのリリース予定だったが、MigosのBad and Boujeeでの活躍もあって、急遽CDでのリリースとなったようだ。Lil Uziを見出した地元の大物、Don CannonがメインのProducerとして制作をリードしている。いわゆるTrapものが多くを占め、哀愁感漂うゆったりとしたビートに、Lil Uziの唄うようなRapがのっかっている。一部Auto Tuneも使っているようだ。ダウナーで不穏な雰囲気のTrackでDrug依存の個人的な苦しみなどをRapしているのだが、なぜだかメロディがとてもキャッチーで時にメローだったりするのが特徴的だ。
Mavis Staples / If All I Was Was Black
[Mavis Staples / If All I Was Was Black] Mavis Staplesの1年振りとなるアルバム。WilcoのJeff Tweedyと3度目のタッグを組んている。前回組んだ前々作と同じ印象で、R&B色は弱く、Rock, Country, Folk, Bluesの要素も交えた如何にもアメリカらしいアルバムになっている。今回の楽曲は全て、そのJeff Tweedyによる新作で、ゆったりしたバンドサウンドの上にMavisの落ち着きつつ、意思が込められた歌声がマッチしている。社会性の高いメッセージを諭すように唄っている。最初、このタイトル、誤植かと思ったのですが、これで文法的にあってるんですね。
N.E.R.D / No_one Really Every Dies
[N.E>R>D> / No_one Really Ever Dies] 7年ぶりとなるN.E.R.Dの5作目。グループ作ではあるが、最近、大忙しのPharrellの存在感がかなり強い。そんなPharrellの最近作の特徴であるPopで明るい印象はそのままに、アグレッシブさと遊びの要素が加わった尖がった作品になっている。曲調も様々で、曲の途中でトーンが変わる曲も多く、実験的な試みも多数で、一曲一曲が聞き逃せない。逆に過去の作品のようなロック色は大分薄まったが、それはいい方向に働いていると思う。また、Guestが超豪華。Billy Idol(日本のアイドル)よりの二人も参加している。
Miguel / War & Leisure
[Miguel /War & Leisure] 前作が高評価を得たMiguelの2年ぶりの4作目。最近は映画にも進出している。ロック寄りだったその前作に比べるとR&Bへの揺り戻しを感じる。また、明るい曲やラテンっぽい曲もあって、逆に今までの捻じれた感触はやや薄まり、結果、一層聴きやすくなった。また、メロディやMiguelのVocalに比重が置かれている気がするし、官能的なところが特徴だったMiguelの唄も力強くシャウトするものなど、表現の幅が広がってると思う。前作引き続きのProducerがメインだが、Happy Perezが多くを担当し、Trackにも工夫があって面白い。RapperのGuestが要所要所に参加し、華を添えている。
J Hus / Common Sense
[J Hus / Common Sense] London出身のRapper, J Husのデビューアルバム。UKのクラブっぽさは、あまりなく、US Hip-Hopに馴染んだ耳にも違和感なく入ってくる。TrackはストレートなHip-HopとゆるめなRaggaeが半分ずつくらいで、そこにGambiaの血を引くJ Husらしい、曲によってはAfro系の音がミックスされている。J HusのRapは今どきの唄うようなものが多く、声は太目で、高音と低音で声色を使い分けている気がする。特にRaggae曲にマッチしている。盟友のJae5が全曲Produceに参加していて、これはこれで出来は良いと思うが、流行りのPriducerにも料理してほしい人材だ。
Moses Sumney / Alomanticism
[Moses Sumney / Alomanticism] LA近郊出身のVocal,Moses Smneyのデビューアルバム。全曲の作詞作曲と1曲以外のProduceを担当し、楽器も弾く、マルチな才能の人のようだ。また、その結果、極めて私的なアルバムになっている。ファルセットが大部分を占める歌声は、官能的で美しい。全曲スローなTrackはリズムを最小限にしたアコースティックでジャンルレスなサウンドで、Mosesの歌声を引き立てることを目的としているようだ。アルバム全体の印象はアンビエントで幻想的で内省的。そっちの方向にかなり振り切っている。ただ、不思議と暗さがなく、聴いていて癒された気持ちになる。
Vince Staples / Big FIsh Theory
[Vince Staples / Big Fish Theory] 前作で高評価を得て、注目MCの一人となったVince Staplesの2年振り2作目。Von IverやDamon AlbarnなどHip-Hop以外からのArtistを迎え、多少、とっちらかり気味ではあるが、Audienceに迎合せず、作りたい作品を作ったようだ。その結果、Darkで低体温で不穏な雰囲気は引き続きだが、エレクトロの要素を多く取り入れて、自分にとっては、少し聴きやすくなった気がする。それでもシーンではOne and Onlyな存在だと思うし、次の展開も期待される。
Tamar Braxtpm / Bluebird Of Hapiness
[Tamar Braxton / Bluebird Of Hapiness] Toniの妹のという枕詞が不要になったTamar Braxtonの2年ぶりの4作目。本人によるとアルバムとしてはこれが最後になるとのこと。(どうもArtist活動は続けているようだが)。レーベル(Sony)との金にまつわるゴタゴタを経て、自身のレーベルからのリリースとなる。そんな動きはあったものの、アルバム自体は質の良いものに仕上がっている。Producerを一新し、特にRodney Jerkins、Troy TaylorなどR&B畑の実力派Producerを迎えたこともあり、スロー中心の落ち着いたR&B作になっている。レゲエやカリブっぽい曲もあるが、しっとりした曲が中心となる。TamarのVocalも低音から高音まで曲に合わせて、使い分けていて、流石の表現力を魅せている。
Rapsody / Laila's Wisdom
[Rapsody / Laila's Wisdom] North Carolina出身で29歳の女性MC, Rapsodyの2作目。キャリアは10年近くになるが、2017のGrammyにもノミネートされ、一気に注目が高まっている。9th Wonderのレーベル所属ということもあり、9th Wonderおよびその一派のProducerが制作を担当している。Terrace MartinやJames Poyserも部分参加した演奏中心のオーガニックでゆったりとしたTrackはソウル色が強く、かなりの心地よさで、落ち着きと力強さを重ね持つRapsodyのRapとの相性も良い。さらには、Roc Nationとの提携もあってか、豪華なGuest陣が花を添えている。最近にR&B, Hip-Hopの方向性ともシンクロした作品だと思う。ちなみにLailaはRapsodyの祖母とのことです。
Sam Smith / The Thrill Of It All
[Sam Smith / The Thrill Of It All] デビュー作が特大ヒットとなり、グラミーも多数獲得したSam Smithの3年ぶりの2作目。その間の日記と本人もいっているように、Lyricはパーソナルなものだし、カミングアウトしたゲイを前提としたものもある。前作からの流れを踏襲したオーガニックでアコースティックな作品ではあるが、Gospelっぽい曲があったり、John Legendかと思うような太めの低音を披露したりと広がりを見せている。お馴染みのJimmy NapesとSteve Fitzmauriceがメインプロデューサーではあるが、そういったTrackでは、Emile Haynie、TimbalandといったHip-Hop系Producerが控えめに色を出している。本人のVocalも厚みと表現力が増していて、着実な成長が判る。冬の帰り道に聴くと、ほんと、沁みてきます。
Ty Dolla $ign / Beach House III
[Ty Dolla $ign / Beach House III] Ty Dolla $ignの2年振り2作目。MixTapeから続くBeach Houseシリーズの3作目ということになる。前作同様、本人は唄(こちらの比重が多め)とRap両方でスキルを披露し、今どきのHip-Hop Soulの良作に仕上がっている。全体的にはだいぶリラックスした感じで、メローで軽快なスロー曲が中心となっているが、Damian MarleyとのRagae曲やその後のながれはアクセントにもなっているし、新たな試みではないか。豪華なGuestは客演仕事で気づいたリレーションによるものだろう。また、ProducerはSkrillexが新たに参加し、多くの曲に加わっていて、アルバムのQuality向上に貢献している。多めの20曲ではあるが、短めの曲がどんどん切り替わっていくので飽きないで聴き通せる。
Kelela / Take Me Apart
[Kelela / Take Me Apart] 2013年リリースのMix Tapeが好評だったDC出身のVocal, Kelelaのフィジカルデビュー作。そのMix Tapeに引き続きUKよりJam Cityと、なんとArcaがProducerとして参加していて、R&Bの枠を大幅に越えたジャンルレスなVocal Albumになっている。シンセを多用したTrackは、スローで浮遊感のある揺蕩うようなものばかりであり、Bjorkに影響を受けたというKelelaのなめらかで透き通った声と一体化している。ただ、逆にKelelaの唄が唯一R&Bらしい気もする。やや単調なところもあるが、新しいR&Bの方向性を示した意欲作だと思う。
Run The Jewels / Run The Jewels 3
[Run The Jewels / Run The Jewels 3] 約2年振りとなるRun The Jewelsの第3弾。今回も無料DL, フィジカル, デジタルで入手できる。骨、包帯と変化してきたCDジャケットの手のイラストは、今回、金の手袋をまとっているが何を意味しているのだろうか。 ポリティカルなメッセージを発信したり、ヘビーなだけでなく、そこそこキャッチーなところもあって、チャート1位も獲得している。ただ、ロック色の強いコアでストレート押しの強いHip-Hopはそのままで、3作目ということもあり、El-PとKiller Mikeのコンビネーションは完成の域にあるのではないか。Danny BrownやKamasi WashingtonといったGuestをうまく活かしていて、Trackにも相当工夫が施されているし、かなりの聴き応えだと思う。
SZA / Ctrl
[SZA / Ctrl] St. Louis出身で27歳になるSinger, Song Writer, SZAのメジャーデビュー作。Artist nameはRZAへのリスペクトを込めているらしい。デジタルでのEPを経て、満を持してのリリースであり、TDEの紅一点ということでレーベルメイトのKendrick Lamarもゲスト参加している。いわゆるR&B色は希薄で、オーガニックでゆったりとしたサウンドが特徴的。Rock, Folk, JazzにHip-Hopなどをミックスしたような独特のみずみずしい作風であり、既にしっかりと個を確立している。Vocalも力強く、表現力も高い。メインプロデューサーを3人に絞ったことにより、まとまりの良いアルバムになっている。
Musiq Soulchild / Feel The Real
[Musiq Soulchild / Feel The Real] 昨年から引き続きとなるMusiq Soulchildのたぶん9作目。Amazon JapanでMp3が10円だったので、目を疑いながら購入しました。前作からインディのeOneからのリリースとなり、ジャケットが似ていることから連作なのかと思われる。2枚組24曲の大作ではあるが、特にコンセプトのようなものは見当たらず、いつものディアム-スローを中心とした美メロの曲が続いている。全体的に茫洋とした柔らかい雰囲気があって、たまにアンビエントなTrackやRapを取り入れたりしているところが、変化点か。まんまStevieな曲もあるが。。気張らずにBGM 的に聴くと心地よいアルバムである。
Kamasi Washington / Harmony Of Difference
[Kamasi Washington / Harmony Of Difference] Kamasi Washington、2017年秋リリースの作品。前作は3枚組の大作だったが、今回は30分強のEPとなっている。6楽章まである組曲形式となっており、1-5曲目は個々のタイトルをコンセプトにした小品で、13分半の6曲目で帰結し、大団円を迎える構成となっている。スピリチュアルで揺蕩うような演奏は前作から変わらないが、個々の曲はより抒情的でメロディアスになった気がする。そして、6曲目はストリングスやコーラスも交えた壮大なパノラマともいえる。パーソネルもほぼ変わらずで、おなじみのThundercatやTerrace Martinもその6曲目に参加している。
TLC / TLC
[TLC/ TLC] なんと15年振りとなるTLCの5作目にしてラストアルバム。クラウドファンディングによって資金を集め、残されたT-BozとChilli二人によって、制作された。よって、何の制約も無く、自分たちの作りたいものを作った感がある。結果、当時を思い出させるTLCらしい作品になっている。ただ、時代を引っ張っていた感覚はさすがになくなっているが。Trackはアップ、ミドル、スローを取り混ぜた華やかなR&Bで最近の流行りとは無縁な印象。T-Bozの低くて低体温な声と、Chilliの女性らしいVocalとのコンビネーションは、これぞTLCという感じだ。
Tyler, The Creator, / Flower Boy
[Tyler, The Creator / Flower Boy] Tyler, The Creatorの2年振り4作目。全体的に、浮遊感のあるPopでメロウなTrackが多く、JazzやFolkっぽい曲もあったりして、今まで以上に聞き心地が良い。Frank Ocean, Steve Lacyなどの身内や若手MC(一人はWill Smithの息子)、EuroからのGuestを迎え、なかなか華やかでもある。ただ、Lyricのほうは、自身の現実の問題などもからめつつ、相変わらず暗め。低くよれたRapも今まで通り。ただ、これ、全部Produceしているのは、なかなかの才能だと思う。
Khalid / American Teen
[Khalid / American Teen] エルパソ出身、今年19歳のR&B Singer, Khalidのデビューアルバム。いきなりのメジャーリリースということで注目度も高く、チャートアクションも好調のようだ。朴訥として野太い特徴的な声とオーガニックで判りやすいメロディーにから、カントリーに近い人かと思ったが、よくよく聞いてみると、Hip-Hop系のProducerを起用し、エレクトロでアンビエントなTrackや、カリブテイストな曲もあり、今どきの若手世代R&Bアルバムになっている。ミディアム?スロー中心だが、Popで明るい曲もあり、意外と楽しめる。それにしても、10代にして、この落ち着きには驚かされる。
Stormzy / Gang Signs & Prayer
[Stormzy / Gang Signs & Prayer] London出身のHip-Hop MC, Stormzyのデビュー作。若くしてUKグライム新世代を代表する人だそうで、UKチャートでは一位を獲得している。そんな先入観を持たずに聴いた感じでは、あまり、USシーンとの違いは感じられなかった。構成として前半はTrapっぽいTrack中心のストレートなHip-Hop。中盤以降はバラエティに富んでいて、Keklaniをゲストに迎えたメローなR&B曲や、スムースなソウル、ゴスペルなど様々。StormzyのRapは歯切れがよく、高速なものも特長がある。AdeleなどをProduceしたFraser T. Smithがほぼ全曲にProducerとして関わっている。
Syd / Fin
[Syd / Fin] The InternetのVocal, Sydのソロデビュー作。The Internetは比較的ストレートなバンドサウンドが特長だが、こちらはより密室的で艶やかなR&B作である。Erykah Baduあたりに近いかもしれない。バンド仲間のSteve Lacyは自身で半数近くをProduceし、その他若手Producerも起用したTrackはスロー中心でエレクトロな雰囲気であり、茫洋としてアンビエント。内省的で静謐なSydの唄がマッチしている。統一感のとれたアルバムでもある。
Lil Yachty / Teenage Emotions
[Lil Yachty / Teenage Emotions] ATL出身で派手なヘアスタイルが特徴のRapper, Lil Yachtyの初商用アルバム。ここ1,2年で話題になっていた人だが、この作品で一気にブレークした。アルバムリリース時は19歳であったが、作品のクオリティはかなり高い。Diversityたっぷりのアルバムジャケットは一部からの批判を受け、本人もHip-Hop Legendのあまり影響を受けてないそうで、大人に支配されない新しい世代のHip-Hop Artistの誕生と言える。そんな賑やかなアルバムジャケットとは違って、サウンドはアンビエントでPopな印象で、技巧はさておき、ところどころでAuto Tuneを使ったメローで唄うようなRapは今どきっぽい。70分の長尺だが、ProducerやGuestも多様で飽きさせない。物静かな曲が多い中、⑨のRaggae曲が楽しめた。
Leela James / Did It For Love
[Leela James / Did It For Love] Leela Jamesの3年ぶりの6作目。今までの路線を継続した、普遍的なR&B作となっている。バンド演奏に、PianoやHornを加えたTrackは、Upなものから、ミディアム~スローと様々。曲にあわせて、時にはしっとりと、時には力強く歌い上げている。話によると大半の曲の録音時には妊娠してたそうで(のちに無事出産)、そんな私生活でのハッピーさも反映ているようだ。30歳代中盤を迎え、ますますの安定と成熟を見せている。
Jay-Z / 4:44
[Jay-Z / 4:44] Jay-Zの4年振り、13作目。Beyonceが前作のLemonodeで、Jay-Zの浮気を嘆いていたことに対するアンサー作的な位置づけになり、1曲目からKill Jay-ZとRapしたり、Beyonceや娘(Bonus Track)をGuestに起用したうえで、Family色を押し出した曲を後半に配置したりと、イメージ回復に躍起となっている。前作No IDによるTrackは、古めのソウル曲のサンプリングを多用しつつ、うまくまとめており、流石のQualityと統一感を生んでいる。弟子のKanyeの初期の作品を彷彿させる気もする。まあ、壮大な茶番劇といえないこともなく、こんなことまでビジネスに結びつけるJay-Zは流石の商売人だ思う。
Bryson Tiller / True To Self
[Bryson Tiller / True To Self] デビュー作のTrapsoulがミリオンヒットになった、ケンタッキー出身のSinger / Song Writer, Bryson Tillerの2年振りの2作目。第一印象では、DrakeやFrank Oceanのようなアンビエントでダウナーで浮遊感のあるサウンドが特徴的。ただ、本人がAlbum Noteでインスピレーションを受けたとしているArtistの多くは女性R&B Singerで、ちょっとした違和感はあるのだが、多くのTrackで90年代R&Bを引用しており、アプローチとしては新しい。ところどころでUpな曲はあるがスロー中心の構成で、Brysonの静かで切ない唄が、マッチしている。
Big Boi / Booomverse
[BIg Boi / Boomverse] Big Boiの5年振りとなるソロ3作目。TitleやCD Jacketから宇宙志向なのかと思ったら、そうではなく、路線は今まで通り。Organized NoizeをExecutive Producerに迎え、前作よりは唄少なめで、バラエティに富みながら、まとまりのよいHip-Hop作である。Guest陣も豪華で、サウスのりの曲中心に、FunkでUpな曲が加わるような構成だが、特に②の初音ミク使いには驚いた。とにかく、Big Boiらしい楽しい作品に仕上がっている。
Kehlani / SweetSexy Savage
[Kehlani / SweetSexySavage] Oakland出身の女性R&B Singer, Kehlaniの初physical作。Mixtapeでのグラミーノミネートを経てのメジャーデビューである。全身タトゥーに、黒人とは言い切れないような多様な混血ということもあり、型にはまらないような音楽かという先入観もあったが、それほどでもなく、やや低体温気味の今どきのR&B作品である。序盤はPopな曲が続くが、中盤より茫洋とした静謐なスロー曲に切り替わる。Trackも、今どきではあるが、騒がしくなく、キュートなKehlaniの歌声を引き立ててると思う。
Migos / CULTURE
[Migos / CULTURE] ATL出身の親戚3人によるHip-Hop Act, Migosの2作目にして、大ブレイク作。④の替え歌をSNSに乗せるのが流行ったようで、このアルバムもチャート1位を獲得している。南部の一大潮流となったTrapの2017年を代表する作品になっており、Zaytovenなど、そっち系のProducerによるシンプルなTrackが特徴的である。それだけでなく、3人組の特徴を活かした掛け合いというか合いの手というかで、独特で絶妙な間を作り出しており、これがやみつきになる。
John Legend / Darkness And Light
[John Legend / Darkness And Light] 3年振りとなるJohn Legendの5作目。Alabama Shakesの出世作"Sound & Color"をProduceしたBlake Millsに制作を任せており、いつものR&Bとはまた違った印象が目新しい。固めのBass音が特徴的なアコースティックで太めのバンドサウンドに、Organ, Strings, Horns, PresussionをところどころフィーチャーしたTrackはそれだけでも聴き応え十分。そのうえで、John Legendが硬軟取り混ぜ、自由に唄いあげている。良メロディーのしみじみとした曲も多く、味わいがある。
Joey Bada$$ / All-Amerikkkan Bada$$
[Joey Bada$$ / All-Amerikkkan Bada$$] Joey Bada$$の2年振り2作目。90年代イーストコーストのHip-Hopを受けついでいる人で、DJ Khahliliや身内のKirk Knightなどによるサウンドは、ハードコアでストレートなものもあるが、全体的にはメロウでスムースでPop。それだけでも十分に楽しめるのだが、Lyricsのほうは、とってもポリティカルで現状の黒人社会の状況を憂い、怒りを体制にぶつけており、本人も若い世代が意見を主張することが重要と言っている。それに加え、Rapスキルは一層高まっていて、22歳とは思えない落ち着きを示している。
Valerie June / The Order Of Time
[Vlarelie June / The Order Of Time] テネシー出身でアメリカーナのSinger, Valerie Juneの2作目。全曲のWritingも担当している。CD Jacketの雰囲気とはまるで違って、Roots MusicにR&B, Blues, Folk, CountryをMixしたような比較的ゆったりとした素朴な曲によって構成されている。ところどころ管楽器を用いたバンド編成による静謐なTrackに、Valerieの揺蕩うような、やわらかい声が心地よく、穏やかな気持ちになれる。音楽的志向は全然違うはErykah Baduの唄を思い起こさせる。
Wale / Shine
[Wale / Shine] Waleの2年ぶり5作目。Producerはほぼ一新されたが、前作からの流れを踏襲している。冒頭では唄中心かと思ったが、後半はRapに比重を移している。それにしてもバラエティに富んだ作品で、アンビエント、ラテン、サウス、ストレートなHip-Hop、Popな曲、スローでメローな曲と様々。曲ごとにProducerが違って、Guestも多数ではあるが、散漫になることなく、凝った曲が多くただただ面白い。ゆるめのだみ声Rapも相変わらずで、味わい深く聴けます。
Mary J Blige / Sterngth Of A Woman
企画物やサントラが続いてたMary J BilgeのHip-Hop Soul回帰作。若手中堅が懐古的な作風やアンビエントな方向に流れる中で、40代半ばのベテランがストリート感覚あふれる今どきのR&Bを展開していて、なかなか爽快だ。以前のMaryのような痛々しい印象は微塵もなく、最初から最後まで力強く感情のこもったVocalで引っ張っている。Upな曲、Jazzっぽい曲、しっとりしたスローと構成もバラエティに富んでいる。良曲揃いだが、 特にKaytranada+Badbadnotgood Produceの⑫などは、クールでリズムに凝っていて面白いと思う。
Hidden Figures The Album
[Hidden Figures The Album ] NASAの3人の黒人系女性スタッフの活躍を描いた映画の挿入歌集。ちなみにサントラは別にある。Pharrelが全曲Peoduceし、ほとんどの曲にSingerとしても参加しているので、Pharrellのアルバムと言ってよい。3人のうちの1人を演じているJanell Monaeを含め、豪華な女性SingerをGuestに迎えた華やかな作品でもある。映画が映す時代に合わせた60年代R&BにGodpel要素を加えたようなサウンドで、Pharrellなりに洗練させたPopで楽しい作品になっている。日本でも公開されるようなので是非見てみたいものだ。
Kendrick Lamar / DAMN.
[Kendrick Lamar / DAMN.] 未発表曲集を挟み、約2年振りとなるKendrick Lamarのオリジナルアルバム。大傑作だった前作に比べると、コンセプト性もなく、現在のKendrick Lamarの自然体な内面を晒したような作品になっている。曲調はWestsideっぽい哀愁調のものから、メロディアスなスローなど様々。どこか抒情的な雰囲気の曲も少なくない。Rihanna, U2(!)などのGuestもあまり目立たず、Kendrick LamarのRapとLyricに焦点を当てており、そのスキルが一級品であることをあらためて見せつけている。
Sammus / Peaces In Space
[Sammus / Peaces In Space] NY出身の女性Rapper, Sammusの2016年リリースのアルバム。セルフやIndyでのリリースのみだが、既に30歳(2016時点)ということで5枚目となる模様。両親が大学教授で、本人も博士号を取得している才女で、ConsiousなLyricも家庭環境によるものではないか。Song WritingやProduceもほぼセルフで、打ち込みとシンセ中心の手作り感たっぷりのサウンドになっている。スロー~ミディアム主体でR&BベースのTrackのうえに、唄うようなRapを展開しており、地味ながら、表現力は高いと思う。どこか懐かしい気分にさせられる作品である。
Sampha / Process
[Sampha / Process] South London出身のSinger / Writer / Producer, Samphaの1stフルアルバム。The XX, Jessie Ware, Kanye Westなど数々のアーティストとの仕事を経て、待望のデビューということになる。アルバムの印象はかなりユニークで、R&B, Pop, Electric, Rockをクロスオーバーさせたジャンルレスなものになっている。低体温でゆったりと静かに燃え上がるような曲が多く、アンビエントでありながら、USのものとは違う何か儚い感触がある。まだ、少しざらついてくぐごもったSamphaの声もかなり特徴的で、もやっとしたサウンドに溶け込んでいる。
Thundercat / Drunk
[Thundercat /Drunk] LAの音楽一家出身で、Suicidal Tendenciesでの活動を経て、Erykah Baduへの曲提供、さらには、LA人脈のFlying Lotus, Kendrick Lamar, Kamasi Washingtonとの共演・交流もあってシーンの重要人物の一人となったBassist/SingerのThundercatの3枚目のアルバム。そのFLying LotusのLabelからのリリースであり、多くの曲でAdditionnal Productionとして参加している。不穏な雰囲気のCDジャケットとは裏腹に意外にPopで爽やかなAORっぽい曲が多い。TrackはFlying Lotusの諸作に通じるJazz, Rock, Fusionをクロスオーバーさせて一捻り加えたようなもので、ThunderctatはBassと唄の双方でフィーチャーされ、唄はファルセットを多用した茫洋としたものがほとんど。サウンドはBass+打ち込み+たまにDrumなどの楽器による構成となっている。短めの曲を切れ目なく繋いでいく中毒性の高いアルバムである。
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