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SiR / Heavy
[SiR / Heavy] CaliforniaのInglewood出身で、現在はTDEのトップシンガーでもあるSiRの4枚目のアルバム。既に37歳ということで、2010年代中盤よりアーティスト活動を開始し、当作にゲスト参加してるAnderson .PaakやChris Daveなど主に西海岸中心に様々なアーティストと共演を経て、実力を認められるようになり現在に至っている。前作より5年たち、その間にアルコールや薬物依存、恋愛問題などいろいろあったようだが、そんな状況を癒すようなメローでメロディアス、スローなTrackが続き、⑯の70年代ソウルで締めている。耳に心地よいリラックスした曲も多く、タイトルやジャケットからイメージされるダークな印象は薄い。SirのVocalは熱唱型ではなく、落ち着いた感じ、少しひしゃげた味のある歌唱である。なお、①では実兄のD SmokeがPianoを弾いている。

Ariana Grande / Eternal Sunshine
[Ariana Grande / Eternal Sunshine] Ariana Grandeの7作目。前作から4年と過去最長のインターバルであり、本人もその間に30歳を迎えている。そんなこともあって、過去の恋愛や別れを唄いつつ、デビュー以来ひきづっていた少女らしさとも決別した大人っぽい作品になっている。唄のほうも声質や高音の豊かさは維持しつつ、表現力は一段高いところに到達している。制作陣はMax Martinと Ilya Salmanzadehのスウェーデン出身のProducerがメインとなり、USのコンテンポラリーなR&Bとは違った北欧っぽさも感じられ、スローな美メロに流麗なTrackが組み合わさって大人なArianaに寄り添っている。

Chief Keef / Almighty So 2
[Chief Keef / Almighty So 2] 2010年代前半、いまだ10代の時に(シカゴ)ドリルを生んだといわれ、当時、武器の使用容疑で逮捕されたりと、かなり早熟だったChief Keefの2024年最新作。年齢は28歳になったが、まだまだ落ち着きは見せず、勢いがあって、音がぎっしりと詰まった作品となっている。サウンドはミディアム〰スロー中心でTrap色が濃い曲が多く、ベースの音圧もやや強め。本人も全曲の制作に携わっているが、荘厳な曲やメロディアスな曲など様々。Guest陣ではTierra WhackやSexyy Redなどが華をそえているが、Tierraの高速ラップ?はかなり意外だった。

Hiatus Kaiyote / Love Heart Cheat Code
[Hiatus Kaiyote / Love Heart Cheat Code] Hiatus Kaiyoteの3年ぶりとなる4作目。Produce, Song Wrting, Engineeringをほぼバンドメンバーでこなしており、より一体感があって、凝集度の高いアルバムになっている。サウンドはネオソウルやジャスをベースにしつつ、後半にかけてはラウドなロックも加わって、彼らだけしか再現できないものである。高度なテクニックとバンドとしての経験によるクオリティの高さを維持しつつ、さらに変化とメンバー間の化学反応にも富んたTrackばかりである。一方、作りこみすぎた感も無くはないが、このあたりは、あまり気にしなくても良さそうだ。なおアルバムタイトルは架空のスーパーマーケットの名前とのことである。

Tems / Born In The World
[Tems / Born In The World] ナイジェリア人の母と英国人の父を持ち、自身もナイジェリア出身で、幼少期の一部をUKでの生活を送ったという、Singer, Song Writer, Temsのフルデビューアルバム。2020年代にはいるあたりから、客演仕事で目立つようになり、最近勢いづいているAfrican Pop勢の一翼を占めるようになった。ガーナ人ProducerのGuilty BeatzらによるTrackは打ち込みメインではあるがアコースティックな印象を受けるものが多く、Afro Popに軸足を置きつつ、普通っぽいソウル、メランコリックなスパニッシュ風、レゲエ風など、タイトルにあるようにグローバルなものになっており、ゆったりとした曲が多めとなっている。Temsの唄はアラサーということもあって、落ち着きのあるもので、自身の生い立ちや恋愛を唄っており、染みてくるような曲も少なくない。

NxWorries / Why Lawd?
[NxWorries / Why Lawd?] NxWorriesの8年ぶりとなる2作目。ソロをメインに活躍している2人だが、久々の再結成となった。Knxwledgeによるサンプリング主体のビート(CreditにはProduceではなくBeatと記載されている)は、前作より聴き易くなり、スイート・ソウル、ネオソウル感一杯。ただ、短い曲を曲間を廃排してどんどんつないでいく構成は前作同様となっている。Anderson .Paakのほうは、私生活における傷心などをいつものひしゃげた声でメランコリックに唄い上げている。また、Snoop, Thundercat, H.E.R., Earl Sweatshirtなど西海岸より豪華ゲストが参加しているが、あまり出しゃばらない程度に抑えられている。なお、ラストのインスト曲⑲では、大野雄二によるルパン三世の劇中曲をサンプリングしている。

Vince Staples / Dark Times
[Vince Staples / Times] 2年ぶりとなるVince Staplesの6作目で、Def Jamでの最後の作品となるとのこと。最近ではNetflixドラマに主演し、活動の幅を広げている。前作のRamona Park Broke My Heartの続編的なアルバムで、一層内省的で、感傷的なものとなっている。スロー中心のTrackも、同じくメランコリックでエモーショナルなトーンで統一されており、メロディックで美しいトラックも少なくない。メジャーなProducer, Guestの参加もなく、本人によるLyricとフローでここまでのアルバムを作ってしまうのは流石。

Beyoncé / Cowboy Carter
[Beyoncé / Cowboy Carter] 前作より始まったactシリーズ3部作の2作目となるBeyoncé、2年ぶりのアルバム。その前作ではハウスに取り組んでいたが、今回はCDタイトルからも明らかなようにカントリー作品となっている。Lil Nas Xやゲスト参加しているShaboozeyなど、黒人が白人音楽の最たるものであるカントリーを志向する兆候はあったが、ついにという感じである。この分野に詳しくないのだが、もろにカントリーな曲もあるし、R&Bやエレクトロとミックスしたものまで、曲風は様々。②⑩㉑がカバーとなっているが、なんと②ではご本人のPaul McCartneyが制作とギターで参加している。また、制作にはThe-DreamやRaphael Saadiqといったいつもの仲間も参加している。また、Willie Nelson, Dolly Parton, Miley Cyrusといったカントリーの大物もグストに招き、そっち方面の人たちに受け入れてもらうための準備を怠っていないのはさすが。アメリカ南部の歴史が単なる二項対立だけではなく、複雑に融合してきたことを改めて認識させられた気がする。BeyoncéがR&B Queenから、ついに全能の女神に昇華したことも感じさせる作品でもある。

Schoolboy Q / Blue Lips
[ScHoolboy Q / Blue Lips] Kendrick Lamarが抜けたTDEを引っ張る存在となったSchoolboy Qの5年ぶりのアルバム。既に2024年前半を代表するRap Albumとしての評価を得ている。なお、タイトルは本人によると文字通り、青ざめた唇を意味しているとのこと。この5年の間にはまっていたゴルフから得られる精神的充実感もあって、過去を見直すような、富み、名声、ドラッグ、家族などへの感情を表現し、今までにない社会的側面も加わった作品となっている。メジャーなProducerはあまり参加していないが、サンプリングを中心にしたTrackのクオリティは高く、Jazzっぽさが加わった曲も数曲。なお、⑨では日本のシンガー、長谷川きよしの旅出つ朝がサンプリングされている。

Tyla / Tyla
[Tyla / Tyla] 南アフリカ・ヨハネスブルグ出身のSinger, Song Writer, Tyka(22歳)のデビューアルバム。2024・66th Grammy賞でBest African Music Performanceを受賞し、ここ数年、ジャンルとしてブレークしているAmapianoを、世に広げる役目も果たしている。言ってしまえば、ゆったりとしたアフロビートにハウス、ジャズなど都会的なサウンドをミックスして、Popにしたものと言えるが、ログドラムというパーカッシブなシンセベースを多用しているのも特徴的で、普通のドラム的な音はあまり使われいない。Tylaの可憐な唄声もそんなTrackにマッチして、軽やかでPopな印象を与えてくれる。また、本人もSong Writingに加わっているLyricはラブソング中心となっている。アフリカのルーツをしっかりと維持しつつ、ギリギリまでPopにしました、といえるような作品。

Kamasi Washington / Fearless Movement
[Kamasi Washington / Fearless Movement] Kamasi Washington、オリジナルアルバムとしては6年ぶりの3作目。今回も2枚組の大作ではあるが、いつもよりは短め。スピリチュアルで壮大なJazz絵巻というベースラインは変わらないが、コロナ禍に作り始めたり、長女が生まれたりということもあって、本人はパーソナルで内省的なものになってると言っている。またダンス(踊りたくなる)・アルバムでもあるとのこと。唄やRapが多めなDisc-1はスイートっぽくなっていて、DIsc-2は演奏中心のオプション的な位置づけのように感じられる。Disc-1は親しみやすい曲も多く、⑥では新André 3000が長めにフルートを吹いている。もちろん、Kamasiの時にはエモーショナルで、時には滔々としたソロや、おなじみThundercat, Brandon Coleman, Rtan Porter, Cameron Gravesなどによる演奏も聴きごたえ十分である。ちなみに①のメロディーラインは日本の民謡っぽい感じたが、エチオピアを意識した作品らしい

Serpentwithfeet / Grip
[Serpentwithfeet / Grip] Serpentwithfeetの3年ぶり、3作目。黒人のゲイのカップルを主人公にした演劇作品"Heart of Brick"のサントラとして数曲披露済みで、これをもとにアルバム化したようだ。前作もそうだったが、サウンドはされに穏やかな空気感に包まれた耳にやさしいアルバムになっている。全体的にはスローなエレクトリック曲がベースになるが、ラテンっぽく郷愁を誘う②や、Trap、アコースティックな曲などもあって、様々。うっすらとAutotuneがかかったSerpentの唄は美しく儚げで、愛とやさしさに満ちている。CDジャケットはより過激になるが、逆に中身はより平和になっている。

Erika de Casier / Still
[Erika de Casier / Still] ポルトガル生まれで、コペンハーゲンを拠点に活動するErika De Casierの2ndアルバム。UKのレーベルからのリリースであり、GuestもUKより2人、USより1人となっている。2017年あたりから個人レベルで音楽活動を開始し、2021年リリースの前作で名を知られるようになった。唄だけなく、Song Writingもこなし、今作でも半分は単独Produceという才能の持ち主である。アルバムのはいりはドラムンベースやジャングルっぽい曲もあり、エレクトロニックなところもあり、サウンドはUK寄りとなっている。浮遊感のあるTrackにErikaの抑えた、囁くようなVocalが合わさった独特な音像が魅力となっている。メジャーに取り込まれる前に、もう少し、この形を突き詰めてもらいたいと思う。

 
 
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